第7波の真っただ中、4回目接種の対象が拡大したが…
オミクロンBA.5株が猛威をふるっている。原稿を書いている8月17日の時点では、1週間平均で約20万人の感染者が出ており、死者も連日200人を超えている。今回の第7波で一番問題になったのは医療機関の逼迫だろう。多くの医療者が感染し、濃厚接触者も自宅待機を余儀なくされ、多くの医療機関が回らなくなった。そのような状況の中、新型コロナに対する医療者の4回目接種が7月22日から始まった。少しでも、感染することによる勤務や周囲の方への影響を少なくしたいとワクチンを打たれた方も多いだろう。そんな中、ファイザー社製のオミクロン対応2価ワクチンの接種が10月中旬以降に始まるというニュースが流れてきた。
2価ワクチンの効果は従来型ワクチンの1.56倍?
このオミクロン対応2価ワクチンとは、どのようなものなのだろうか。このワクチンの中には、武漢株に由来する成分とオミクロン株BA.1に由来する成分の2種類が入っており、これが2価ワクチンと呼ばれる所以である。2価ワクチンの対象者は、「2回目接種を完了している12歳以上の人」すべてになる予定だ。
2価ワクチンの効果はどうだろうか? ファイザー社の資料(※1)を見てみると、通常のファイザーの投与量30μgを接種した場合、従来型ワクチンを接種した場合と比べると、2価ワクチンでは、オミクロン株BA.1に対して1.56倍の中和力価がつくと報告されている。しかしここで注意しなければならないのは、現在流行しているのはオミクロンBA.5株であるということである。2価ワクチンの効果をみると、BA.5に対しての中和力価はBA.1と比較すると1/3.4(3.4分の1)に減弱してしまっていることが報告されている。このことを鑑みると、2価ワクチンが従来のワクチンより1.56倍効果がある、と言うことはもはやできない。
2価ワクチンを待つか、いまあるワクチンをすぐ打つか
残念なことに、新型コロナの変異のスピードは、私たちが当初想定していたよりも格段に早い。10月中旬における主流の変異株が、オミクロンBA.5であるかどうかさえもわからない。2価ワクチンの副反応は従来のワクチンの副反応に比べて、局所反応も全身反応も大差はなかったとする報告には安心感を覚えたものの、このような状況で2価ワクチンを10月の半ばまで待つのは、あまり意味がないのかとも思った。なので私は、4回目接種対象者に含まれる医療者なので、先週に4回目接種を済ませてしまった。
無論、何回もワクチンを打つのは、打たれるほうも打つほうも大変だし、できるだけ効果があるワクチンを利用したい。ただ現時点で出ている情報を慎重に吟味しながら、その時々で最適な選択をしていくしかないだろう。4回目接種は重症化予防の観点から接種が推奨されているが、4回目接種から1ヵ月間は新型コロナの感染の危険度を約半分に抑えたとの報告もある(※2)。4回目接種の対象者で、4回目接種をいますぐ打つか、それとも2価ワクチンが出るまで待つか迷っておられる方々に、これらのデータが少しでも判断の材料になれば光栄である。
※1 Pfizer/BioNTech COVID-19 Omicron-Modified Vaccine Options
https://www.fda.gov/media/159496/download
※2 Cohen MJ, et.al. Israeli-Hospitals 4th Vaccine Working Group. Association of Receiving a Fourth Dose of the BNT162b Vaccine With SARS-CoV-2 Infection Among Health Care Workers in Israel. JAMA Netw Open. 2022 Aug 1;5(8):e2224657.
小橋 友理江
ひらた中央病院 非常勤医師
福島県立医科大学放射線健康管理学講座博士課程
麻酔科医・内科医
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