急激な物価高で、あちらこちらから悲鳴が聞こえてきますが、特に「年金だけが頼り」という高齢者を直撃しています。生活困窮者には生活保護というセーフティネットがあるものの、そこのハードルも高いようで……みていきましょう。
毎日、生きていくだけで地獄…低年金の高齢者「生活保護」のハードル高く、物価高騰に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

東京在住・単身70歳・貯蓄ゼロで年金月6万円…生活苦で生活保護を申請したが…

取り崩すことのできる貯蓄があれば、まだまし。すべての年金生活者に十分な貯蓄があるわけではありません。「年金だけでは暮らしていけない……」、そんな高齢者が増えています。

 

厚生労働省『被保護者調査』によると、2022年5月時点で生活保護を受けている人は163万9,505世帯、202万3,336人。前年同月比で世帯数は0.1%増、受給者数は0.8%減となりました。

 

ここ2年の推移をみていくと、生活保護受給者は減少傾向にあるのに対し、世帯数はほぼ横ばいという状況が続いています。これは単純に単身世帯の受給が増加しているということ。特に高齢者世帯が増えているのです。

 

生活保護は、日本国憲法第25条に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために、経済的に困窮する人に対して国が給付を行うもの。世帯の実際の収入が「最低生活費」より少ない場合、最低生活費に対する不足分が支給されます(収入には預貯金なども含まれ、それら含めて基準以下であることが要件です)。

 

たとえば東京都23区に住んでいる70代の単身高齢者であれば、最低生活費は以下の通り。

 

3万3,830×1.0+4万0,800円+(必要に応じて住宅補助や介護補助、医療補助等)

 

東京都23区の単身者の住宅補助は5万3,700円なので、持家でなければ12万8,330円が最低生活費となり、年金との差額が生活保護として受給できる、ということになります。もし年金受給額が月6万円だとすれば、それを差し引いた7万円ほどが受給できるということになります。

 

ただし「高齢で貯蓄ゼロで収入は年金だけ」という場合であれば、誰でも生活保護が受けられるかといえば、そうではありません。申請の際には「働くことができるかどうか」という、健康状態も判断基準のひとつなのです。働くことができると判断されれば、職探しを勧められます。つまり「働けない高齢者」であることが、生活保護を受けることのできる条件なのです。

 

最近の70代であればまだまだ元気。生活苦で生活保護の申請を考えても、「生活が大変なのは分かりますが……」と、断られる可能性大。物価高が続き、本当に毎日生きていくだけで大変であっても、「働けるなら働きなさい」というのが、ひとつの答えなのです。