健康的で自立した老後を送るためには、年を重ねても、積極的に活動しつづけ、社会とつながりを保つことが大切です。健康的な老後を過ごすために、70代ですべきことを「こころと体のクリニック」院長の和田秀樹氏が解説します。※本連載は和田秀樹氏の共著『70歳からの生き方が寿命を決める!健康長寿の新常識』(宝島社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
2025年より、すべての企業で65歳定年が義務化
2021年4月、「高年齢者雇用安定法」いわゆる「70歳就業法」が施行されました。寿命が延び、まだまだ働ける高齢者が増えていること、また、老後の生活資金も必要なことから、高齢者に対し一定の就業機会を確保する目的で制定されたものです。
現在は経過措置期間ですが、2025年4月より定年制を採用している企業で65歳定年が義務づけられる予定です。これにともない、70歳までの定年引き上げ、70歳までの継続雇用制度も導入され、多くの人が70歳で仕事を退職することになります。
また70代は、親や夫・妻、友人との死別がやってくるタイミングでもあります。自分自身も、病気を患ったり、介護したり介護されたりと、さまざまな出来事が起こるでしょう。
70歳は人生の分岐点。体が衰えてきた70代にとっては、人生の重大事は大きな負担となってのしかかってきます。はたして、この「70歳の危機」をどのようにして乗り越えていけばいいのでしょうか。
これまで50年近くも一心に働いてきた人にとって仕事を退職することで生じる喪失感ははかり知れないほど大きなものです。喪失感ですべての意欲をなくしてしまわないために、70歳以降も継続してできることを見つけましょう。
また、健康な状態で寿命をまっとうするために医療との向き合い方も検討する必要があります。
「70歳就業法」で70歳定年がスタンダードに
長寿大国・日本のなかで、長野県民が「特に」長寿なワケ
長寿大国・日本の中で、ここ30年ほど上位にランクインしている県に長野県があります。長野県が長寿県である理由として、日本古来の食生活が挙げられますが、もうひとつ大きな理由があります。
それは、長野県が65歳以上の高齢者の有業率が全国1位であるということ。また、高齢者1人あたりの医療費が全国で最低レベルという調査結果もあります。これらのことから、高齢でも活動レベルを落とさないことが体と脳の老化を食い止めることにつながっているといえるのではないでしょうか。
「70歳就業法」の導入が高齢者にあたえる機会
「70歳就業法」の導入で高齢者が働く機会はさまざまに用意されるようになりました。60歳を過ぎても定年後の再雇用制度があるなら、ぜひ利用してください。全国に436あるハローワークのうち、高齢者を対象とした「生涯現役支援窓口」は300ヵ所に設置されています。
また、求人サイトでは、近年、高齢者向けの求人情報も増加し、高齢者に特化したものも登場しています。条件やルールが特殊ですが、シルバー人材センターでは高齢者向けの短期でできる仕事を全国で紹介しています。
もちろん、仕事という形でなく、ボランティア活動で社会にかかわってもいいでしょう。一般的に、ボランティアは各自治体の社会福祉協議会などの管轄で、同じエリアの中で複数のボランティア団体があるので、自分に適したものがあるか調べてみましょう。
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精神科医
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、浴風会病院精神科、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹 こころと体のクリニック院長。老年精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『老化恐怖症』など著書多数。
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連載70歳の危機を乗り越える、健康的な老後の過ごし方