(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて、不整脈の治療といえば薬物療法が主流でした。薬を使わない場合は外科手術により直接心臓の異常部分を治療していましたが、決して低くないリスクが……そこで登場したのが、メスを使わない手術「カテーテルアブレーション」です。今回は、その手術精度をさらに高める「3次元画像システム」の詳しいしくみやカテーテルアブレーションの成功率などについて、東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長が解説します。

慢性心房細動に悩んでいた79歳男性の症例

実際の症例をみてみましょう。下記の[図表9]のレントゲン画像は79歳男性、慢性心房細動の患者さんです。

 

慢性心房細動に対する治療としてペースメーカーを入れ、薬剤による治療を継続していましたが、やはり心房細動が治らないということで、2017年2月にカテーテルアブレーションによる治療を行いました。

 

[図表9]心房細動アブレーションの効果:79歳、男性、慢性心房細動
[図表9]心房細動アブレーションの効果:79歳、男性、慢性心房細動

 

左画像が手術前、右画像が手術後のレントゲンです。「心胸郭比(しんきょうかくひ)」とは、心臓の横幅が胸郭の横幅に比べてどれくらいあるかというもので、心臓の大きさを把握するための指標です。数値をみると、カテーテルアブレーションを行う前の心胸郭比が手術後わずか4ヵ月で9%も減少していることがわかります。

 

また、心臓の大きさが明らかに小さくなっているため、心臓への負担が減っているともいえます。慢性心房細動の場合、大半の患者がこのような結果を得ています。

0.1%だが…合併症のリスクには注意

ひとつ注意してほしいのが、カテーテルアブレーションによる合併症のリスクです。

 

2019年、J-ABデータ(カテーテルアブレーション全国症例登録研究)に掲載された情報によると、カテーテルアブレーションによる死亡率は0.1%でした。つまり、1000人にひとりが亡くなられていることになります。この数字を高いと捉えるか、低いと捉えるかは人それぞれかもしれません。

 

実際のところ、他の手術と比べると、0.1%というのはそれほど高い数値ではありません。たとえば、心臓外科で行う手術に「冠動脈のバイパス手術」がありますが、この死亡率は2%程度です。また、腹腔鏡による胃や胆嚢の手術は、死亡率が0.5%ほどです。

 

しかしながら、死亡率は決してゼロではありませんので、いかに安全性を追求するかということが重要になってきます。

 

最もリスクの高い「心タンポナーデ」

もっともリスクの高い合併症が、「心タンポナーデ」です。

 

これは簡単にいうと、カテーテルが心筋を破ってしまう状態のことです。心筋を破ると、心臓を包んでいる心膜のあいだに血液や心嚢液が貯留し、心臓が圧迫されてしまいます。

 

その結果、心臓のポンプ機能が失われ、全身に血液を送り出せなくなり、血圧の低下や頻脈が起こり、ショック状態に陥ることもあります。

 

カテーテルアブレーションの治療中に心タンポナーデを発症する場合、カテーテルの圧が一定以上になり、心筋を突き破ってしまうというカテーテルの過度なコンタクトが原因です。心タンポナーデが起こった場合、短時間で致命的な状態に陥りかねません。

 

こうした事態を防ぐため、先述した「コンタクトフォース」のように現在の圧を視覚化できるカテーテルを使うことや、また、心臓のなかではゆっくりとカテーテルを動かすことが大切です。

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。