進化が著しい人工股関節置換術
脚の付け根が痛くなったり、階段の昇り降りが不自由になったり、しゃがむのが億劫になったり……。そんな不調を自覚したら、「変形性股関節症」の前触れかもしれません。変形性股関節症の症状が進行すると、人工股関節を埋め込む手術が必要になる場合があります。近年、「人工股関節置換術」の術式は非常に進化しています。細かく解説していきましょう。
「最小侵襲手術(MIS)」が主流になりつつある
人工股関節置換術とは、簡単にいえば、損傷している股関節を人工股関節(インプラント)に置き換える手術のこと。減量を目的とした生活指導や、筋力を高める運動療法を行ってもあまり効果がみられず、症状が進行している場合は人工股関節置換術を行うことになります。
近年、人工股関節置換術の術式はめざましく発展しています。これまでは、手術の際に15〜20cmほど股関節の部位を切るのが一般的でした。
しかし、皮膚の切開が大きければ大きいほど回復が遅くなり、術後の痛みも大きくなります。そのため現在では、切開する部分を約10cm以内にとどめる最小侵襲手術(MIS)を行う病院が増えています。
これにより、スムーズな社会復帰が可能になり、多くの患者さんに安心して手術を受けていただけるようになりました。
切開方法(アプローチ)は4種類
人工股関節置換術を行うにあたり、まず考えなければならないのが、どこから切開して股関節に到達するかということです。現在、人工股関節置換術の切開方法は主に4種類あります。
1.前方進入法……股関節の「前面」の皮膚を切開して股関節にアプローチする
2.前外側進入法……股関節の「前外側」の皮膚を切開して股関節にアプローチする
3.側方進入法……股関節の「横側」から皮膚を切開して股関節にアプローチする
4.後方進入法……股関節の「やや後ろ側」から皮膚を切開して股関節にアプローチする
ひと昔前までは、人工股関節の手術は4.の後方進入法しかありませんでした。後方進入法は約15~20cm皮膚を切開して行うので視野が広くなり、手術を安全に行えるという利点がありますが、その反面、後方にある「短外旋筋」という筋肉を切らなければなりません。
筋肉を切ってしまうと、手術後、股関節を深く曲げたときに後ろ側へ脱臼するリスクが高くなります。人工股関節置換術にとって、脱臼は非常に注意しなければならない合併症であり、何度も繰り返す場合は手術をもう1度やり直さなければならないこともあります。
そのため、後方進入法で手術を行った場合は、脱臼しないよう正座やしゃがむのを禁止にするなど、日常の行動が制限されるのが一般的でした。
また、側方からの進入も筋肉を切離する必要があるため、後方進入法と同様に股関節周囲の筋肉へのダメージを避けることができません。
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