高齢女性と男性の間にある「圧倒的な差」
一方、女性は常に自分の頭で考え、判断し、決めることを続けてきました。
日々の食事の献立を決め、家計を預かってその中でやり繰りし、子どもの相談にのったり進路を一緒に考えたりする。面倒で難しい近所付き合いや親戚付き合いも、長年にわたって一手に引き受けてきています。
仕事に打ち込む主人に相談せずに(聞く耳を持ってもらえないので)、一人で考えて決断してきた実績があります。このような「能力差」が、男女の高齢期の暮らしぶりの差となっている面は否めません。
ここまで、時代の変遷を踏まえて「共同体」という視点から、高齢者の置かれている現状を見てきました。
昔にあったムラ社会の脱出、会社共同体への吸収、そして高齢期を前に属すべき共同体を失うまでの成り行き。共同体という視点から見たときの、男女の大きな差。特に、男性高齢者が持ち得ていない地域とのつながりや、自らの思考と決断で生活を組み立てる力。様々な問題が見えてきたはずです。
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川口 雅裕
NPO法人「老いの工学研究所」理事長。 1964年生。京都大学教育学部卒。 株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)で、組織人事および広報を担当。 退社後、組織人事コンサルタントを経て、2010年より高齢社会に関する研究活動を開始。約1万6千人に上る会員を持つ「老いの工学研究所」でアンケート調査や、インタビューなどのフィールドワークを実施。高齢期の暮らしに関する講演やセミナー講師のほか、様々なメディアで連載・寄稿を行っている。 著書に、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「実践!看護フレームワーク思考 BASIC20」(メディカ出版)、「顧客満足はなぜ実現しないのか」(JDC出版)、「なりたい老人になろう~65歳からの楽しい年のとり方」(Kindle版)がある。