「14番目の新しいビタミンか?」と注目された過去も
2003年に、理化学研究所が「PQQは新たなビタミン(14番目)の可能性がある」と発表し、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」にも掲載されて、世界から注目を集めました。
ビタミンは、ご存知のように、人体に必要な微量の有機化合物で、必須アミノ酸をつくるのに必要な物質ですが、残念ながら体内でつくることができないのです。
ビタミンは、水に溶ける「水溶性ビタミン」と、油脂に溶ける「脂溶性ビタミン」があり、合計で次の13種類が知られています。
◎水溶性ビタミン……ビタミンB1、B2、B6、B12、ビタミンC、葉酸、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸
◎脂溶性ビタミン……ビタミンA、D、E、K
人体に必要な物質の摂取不足によって起きる症状を総称して「欠乏症」といいますが、ビタミンは体内で新たに合成できないため、体外から補給できないと、さまざまな欠乏症が起きることがわかっているのです。
ビタミンの欠乏症で代表的なものとして、ビタミンAの不足で起きる「夜盲症」、同じくビタミンDの「くる病」、ビタミンB1の「脚気」、ビタミンB2の「口唇炎」、ビタミンCの「壊血病」などが知られています。
PQQの場合、ヒトにおける欠乏症はまだ報告されていませんが、先述したように、マウスを用いた実験では欠乏症の例が報告されています。最近ではビタミンのようなはたらきを示す化合物や無機質などもビタミンに準じて考えられており、それらは「ビタミン様物質」と呼ばれています。
PQQは現時点では「ビタミン様物質」の一つとして、さまざまな機能を持つことが明らかになっています。ビタミンとして認定されるためには非常に多くの条件をクリアしなければならず、PQQが14番目の新しいビタミンかどうかは現時点ではまだ結論が出ていませんが、私たちの生体にとって重要な成分であることには間違いないと考えられます。
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北 廣美
1949年、奈良県生まれ。1976年、和歌山県立医科大学卒業。
近畿大学医学部付属病院第一外科、昭和病院外科医長を経て、現在、医療法人「やわらぎ会」理事長。
主な著書
『C型肝炎と乳酸菌』(共著、メタモル出版)
『がんを倒す勝利の方程式』(共著、東邦出版)
『がん治療 重大な選択』(東邦出版)ほか