睡眠の質改善、寿命延長作用まで…「PQQ」とは?
太田成男日本医科大学名誉教授によると、認知症の人の脳を調べると、ミトコンドリアの量が少なく、エネルギーをつくる機能が下がっていることはわかっているそうですが、この事実だけをもって「ミトコンドリアが減ると認知症になる」とはいい切れないそうです。
なぜなら、ミトコンドリアが減った結果が認知症なのか、認知症になった結果、脳のはたらきが悪くなってミトコンドリアが減ったのか、はっきりしていないからです。
しかし、最近の研究によって、ミトコンドリアがつくり出すエネルギーの低下が認知症の原因の一つであることがわかってきたので、普段から脳の血流量を増やし、十分に酸素を供給することによって、ミトコンドリアのエネルギーを作る能力を高く保っておくことが認知症に有効であることは間違いないようです。
私も古希を迎え、健康長寿について強い関心をもつようになりました。なかでも認知症の予防を考えることは、私にとって非常に重要な関心事となっています。
こうした事情もあって、太田先生のご著書をむさぼるように拝読しているうちに、ますますミトコンドリアのことを知りたくなったので、いろいろ調べてみました。調べていくなかで、「PQQ」という聞きなれない成分があることを文献で知り、詳細について調べてみました。
すると、PQQにはミトコンドリアを増やすはたらきがあるだけでなく、なんと寿命延長作用や神経成長因子の増強、睡眠の質の改善などさまざまな有用性があることがわかったのです。大いに興味を惹かれて調べているうちに、私はすっかり「PQQ」のとりこになってしまいました。PQQがどんな成分であるのか、これからお話しします。
健康長寿対策に欠かせない成分「PQQ」
PQQとはピロロキノリンキノン(pyrroloquinolinequinone)の略で、1979年に、酸化還元酵素の補酵素として微生物から発見された水溶性キノン化合物です。
日本ではまだあまり知られていないのですが、私たちがふだん口にしている食品や飲料にもともと微量に含まれており、栄養学的にも重要な物質であることが数多く報告されています。
補酵素とは酵素のはたらきを助ける化合物のことをいいます。私たちの体内で行われる消化や代謝などには酵素の作用が不可欠ですが、中には単独では円滑にはたらけない酵素もあります。
この、単独ではスムーズに作用できない酵素のはたらきを助ける化合物が補酵素で、多くはビタミンとして知られています。微生物においては、酸化還元反応などにかかわる補酵素として、PQQがはたらいているとの報告があります。
その後、1989年に、マウスを使った実験で、PQQをエサといっしょに与えたマウスと、エサのみのマウスでは、PQQを与えられなかったマウスは、発達不全、生殖能力低下、骨不全、皮膚の異常や免疫不全などの早期老化を表すような症状(欠乏症)を示すことがわかり、何らかの栄養素としての役割を持つ可能性が報告されました。
ただ、この時点では動物の寿命への効果はまだ明らかになっていませんでした。