2022年上半期首都圏の新築マンションは、販売戸数は減ったものの、平均価格は前年同時期よりも上昇しました。価格上昇を牽引しているのが、駅チカ・高価格帯のタワマンです。いまだ人気が衰えぬタワマンですが、売却を決断する人も増えているようです。みていきましょう。
タワマンを買った「年収1,500万円」の勝ち組・パワーカップル…「そんなの聞いていない」夫婦を襲う想定外 (※写真はイメージです/PIXTA)

パワーカップル…せっかく買ったタワーマンションを売却に

総務省『令和3年労働力調査』によると、夫婦の合計年収が1,500万〜2,000万円未満という世帯は、総世帯のうち0.4%、夫婦共働き世帯の1.35%。かなり限られた人たちだといえます。

 

仮に世帯年収1,500万円のパワーカップルが、返済負担率20%でタワマンの購入を考えたとしましょう。毎月の返済額は25万円となり、年利1%、30年返済とすると、借入限度額は7,772万6,767円、総返済額は9,000万円となります。自己資金を入れると、十分億を超えるタワマンが買えるというわけです。

 

そんなタワマン購入の主要顧客となっているパワーカップルですが、タワマン購入後に売却を決断する夫婦も珍しくないといいます。その要因のひとつが「タワマンの修繕問題」です。

 

実はタワマンに限らず、新築マンションの長期修繕計画は、そこまで精度の高いものではありません。販売時の修繕計画は完成前の図面を元に計画が立てられたもので、実際のものとは誤差が生じてしまいます。

 

またタワマン自体、法改正により2000年以降に多く建てられるようになったものですから、修繕の技術も確立したとは言い難いものであることを理解しておく必要があるでしょう。

 

新宿区が2019年に区内タワマンを対象に行った調査によると、実に半数近いタワマンの管理組合が「修繕金が足りない」と回答。マンションによって異なるものの、12年に1度の修繕が推奨されているなか、十分な修繕が行えるかどうか不透明という物件が実に多い、というのが実態です。

 

またタワマンとはいえ物件間の競争が激しいなか、新築時の修繕積立金を低く設定し、コスト的に有利に見せる販売手法は珍しくありません。これが結果的に「修繕金が足りない」という事態を引き起こしているのです。

 

それでも管理がしっかりと行われ、住民の総意のもと修繕が行われればいいのですが、そこにもタワマン特有の問題があります。タワマンは低層階では7,000〜8,000万円、高層階になれば、1億、2億、3億円という世界。ひとつの建物の中に、一般層から超富裕層まで住んでいるわけです。さらに前述のように、魅力的な投資対象として外国人が保有するケースも珍しくありません。

 

タワマンがひとつの町内会だと考えてみましょう。一般の家族も住んでいれば、超がつくほどのお金持ちもいる。さらには普段は日本に住んではいない外国人の姿も……そんな事情の異なる人たちが住む町内会で同意を得るのが難しいことは一目瞭然。タワマンにおいて、修繕のための同意を得るのがどれだけ困難なことか……想像がつくでしょう。

 

入居して数年が経ち、初めての大規模修繕が行われるタイミングで、そのマンションが抱える「リスク」に気づく人も多いといいます。満足な修繕ができず、将来的な資産価値が心配される……そこで「こんなマンションに住んでいられない」と売却を決心するケースが後を絶たないのです。

 

もちろん、タワマンのすべてがこのような問題を抱えているわけではありません。高い管理体制で新築当初の価値を保ち、さらには高めているタワマンも多くあります。

 

ただ新築時は、その立地や豪華な設備ばかりに目がいき、管理体制の優先順位は低くなりがち。そして実際のところは、入居後、しばらく経ってからでないと、正しい評価はできないでしょう。ただタワマンの後々の資産価値を決めるのは、立地や設備ではなく、何よりも管理体制であることを十分に理解し、購入を検討する必要があるのです。