「カテーテルアブレーション」の原理とは?
カテーテルアブレーションとは、メスを使わない心臓手術の一種。メスを使わないために低侵襲で、身体への負担が少ないとされています。いったい、どのような原理で治療を行うのでしょうか。
スタート地点は「太ももの付け根」
カテーテルアブレーションの“主役”を務めるのが、高周波発生装置という機械。これは文字通り、高周波の電流を発生させる機械です。
高周波発生装置に繋げられている2本の線は、それぞれ違う役割を果たします。まず、1本は対極板として心臓の裏側(背中側や臀部)に貼ります。そして、もう1本にはカテーテルを接続。カテーテルは患者の太ももから挿入し、下大静脈を通して心臓につなぎます。
下大静脈は直接、右心房や右心室につながっているため、スムーズに心臓へカテーテルを到達させることができます。
そして、カテーテルが心臓へ到達したら不整脈の原因を詳細に突き止め、異常な電気興奮の発生箇所を認識し、そこにカテーテルの先端を当て、対局板に向かって高周波の電流を流します。
カテーテルの先端の大きさは約3mmと非常に小さく、先端から心筋に電気が流れる際は、電流密度が非常に高くなります。そのため、電気が心筋へ移動するときに摩擦が発生し、それにより心筋が80〜100度と温められ、直径5mm、深さ5mmくらいの範囲で心筋が焼灼されます。
心筋が焼灼されると細胞が壊死し、これにより異常な電気信号が心臓全体に伝わらなくなって不整脈が治る、というのがカテーテルアブレーションの基本的な原理です。
冷やしながら焼灼する
アブレーションカテーテルの先端には、水が出る穴が空いています。
心筋が80度くらいまで熱せられると、カテーテルの先端も60〜70度くらいまで上昇してしまいます。この先端は血流のなかで“丸見え”の状態であり、血流に温かいものがあると、血液がそこで凝固し、血栓として固まってしまいます。
そのため現在では、カテーテルを冷やすために先端の穴から水を出し、「冷やしながら焼灼する」方法が主流になっています。
実は、以前はこのように先端から水が出るカテーテルはありませんでした。そのため治療のあと、ここで作られてしまった血栓が血流にのって脳に流れ、脳梗塞を引き起こす危険性がありました。
そうしたリスクを踏まえ、安全管理の観点から、「カテーテルの先端を冷やしながらアブレーションを行う」という方法が普及したのです。
「心臓のなかに水が入っても大丈夫なのだろうか?」と疑問に感じる人もいると思いますが、少量であれば問題ありません。ただし、焼灼時間が長くなると、1リットルほどの水が心臓のなかに入ってしまうケースもあります。
その場合、心臓の働きが弱まってしまうため、強心剤を使い、心臓のなかに入った水を尿として排出するように促します。
焼灼のターゲットは?
カテーテルアブレーションは異常な電気信号を起こしている心筋を焼くことで、不整脈が起きないようにする治療法ですが、アブレーションするターゲットは2種類あります。
1つめは、「不整脈が発生する源」をピンポイントに焼灼するケースです。
たとえば、心房細動は心臓のなかに異常な心筋細胞ができてしまい、そこが1分間に500〜600回という頻度で電気刺激を出すため、心臓が痙攣したような状態になることがあります。そのため、不整脈の原因となっている心筋を焼灼して治療します。
2つめは、「電気回路の一部」をターゲットにして焼灼するケースです。
症例によっては、どこかが局所的に問題になっているのではなく、心臓のなかに異常な電気回路が作られており、電気がその回路をぐるぐる回っているために不整脈が起きていることがあります。
その場合、電気回路の一部を焼灼することで、不整脈の発生を防ぎます。
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