“シミ”の原因は紫外線だけではない
紫外線に当たると“シミ”ができやすいということはかなり一般的な知識として広まってきました。
紫外線に当たらないに越したことはないですが、紫外線とは関係なく”シミ”になりやすい人、あるいは同じように紫外線に当たっていても“シミ”になりやすい人、なりにくい人は存在します。
顔にできる“シミ”と一口に言っても“シミ”にはいくつかの種類があり、その種類によって原因も異なるため、“シミ”になりやすい人も違ってきます。“シミ”の種類ごとに、その特徴や、なりやすい人、治療法などを見ていきましょう。
“シミ”の代表格、「日光性黒子(老人性色素斑)」
■紫外線に当たる人ほど現れやすい
一般的に“シミ”と呼ばれるものの中で一番多いものかもしれません。ほとんどが紫外線による光老化によるもので、紫外線に繰り返しさらされることで、“シミ”のもとであるメラニン色素を作るメラノサイトが過剰に活動し、“シミ”になります。
男女ともに発生し、加齢とともに増えていきます。だいたい30代以降にできることが多いのですが、できやすい方では10代のうちから現れることもありますので、若いときからのUVケアが大切です。またこの“シミ”は、日光に当たる部位ならどこにでもできる可能性があり、顔はもちろん、体にも発生し、場合によっては脂漏性角化症という“イボ”へ進展します。“シミ”の形は円形や楕円形であることが多く、境界ははっきりとしています。
はっきりとできあがった日光性黒子に対してはピコ秒レーザーなどを用いたレーザー治療が効果的です。
主に両頬に現れる褐色の“シミ”、「肝斑」
■30~60代女性に多い。お肌を触り過ぎている人は要注意
肝斑(かんぱん)は、30~60代の女性に多く見られ、主に両頬に左右対称に地図のような形で現れる褐色の色素斑です。両頬以外には、口の周り、おでこなどにもできます。診断や治療の見極めが難しい“シミ”のひとつで、日光黒子との合併も多いです。遠めに見ると目の周りの皮膚が白く抜けていることで診断します。
肝斑ができる原因については、まだはっきりしませんが、女性ホルモンによるメラノサイトの活性化との関連が指摘されており、月経前後、妊娠・出産、ピルの服用、閉経などの影響で、肝斑が濃くなったり薄くなったりすることがあります。
ホルモンバランス以外に、紫外線でも増悪しますが、洗顔などのスキンケアにともなう摩擦の刺激などにより慢性的な炎症が肝斑を悪化させる要因と考えられているため、お肌を触り過ぎている人にできやすい“シミ”です。
主には内服治療が選択されますが、美白成分などが入った外用薬、トーニングと呼ばれるレーザー治療なども有効です。
色白・乾燥肌の人に多い「雀卵斑(そばかす)」
■原因は主に「遺伝」。このタイプは日光性黒子もできやすい
色白・乾燥肌の人に見られる傾向があり、主には遺伝によるものです。3歳頃からでき始め、思春期がピークと言われていますが、紫外線に当たっていると前述の日光性黒子もできやすくなる肌質です。
雀卵斑単独では茶褐色で3mm以下の“シミ”が、頬・鼻・まぶたを中心に散らばっています。治療を行っても再燃する可能性が高いです。
ピコ秒レーザーでの治療以外に、IPLなどの光を使った顔全体への治療を定期的に行うことで再発を予防します。
灰色に近い「後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)」
■思春期以降の女性に多い。これがあるタイプは他の“シミ”もできやすい
思春期以降の女性の顔面、早い方だと10代から、特に20代以降に出てくる方が多いです。頬骨の部分に左右対称性に灰色~褐色の数ミリ大の点状の色素斑が多発することがよく見られます。額、まぶた、鼻にも発生することがあります。
他のシミより深い「真皮」の部分にメラニンが存在しているため、茶褐色というよりは灰色に近い斑状の“シミ”です。できる原因は不明ですが、遺伝的な要因だと言われています。
他の“シミ”も合併していることが多く、これがある方は“シミ”ができやすいとも言えます。
ピコ秒、Qスイッチレーザーで複数回の治療が必要です。
ニキビ跡などに一時的に現れる「炎症後色素沈着」
■「日焼けしたら黒くなる人」に起こりやすい
虫刺されやニキビ跡、やけどなど、あらゆる炎症の後に基本的に一過性で起こる“シミ”です。炎症が起こった後には防御反応としてメラニンの産生が多くなるのですが、肌質によってその量が特に多かったり、ターンオーバーによる排出が遅かったりする方もいて、そのまま真皮の深いところにメラニンが落ちてとどまる方もいます。
日焼けした後に黒くなりやすい人は炎症後の色素沈着を起こしやすいと言えます。まずは原因となる炎症の治療と、ターンオーバーを促す外用剤や美白のための点滴・内服・外用剤を用います。肝斑の治療に使うトーニングのレーザーを用いて治療することもあります。
いずれの“シミ”も「紫外線・摩擦」で悪化しがち
持って生まれた肌質はなかなか変えることはできませんが、いずれの“シミ”も紫外線・摩擦で悪化することが多いです。
日光に当たることの多い方、スキンケアの際に擦ったり、肌に触れている時間が長かったりする方は総じて“シミ”ができやすいので注意が必要です。紫外線に対しては一年中日焼け止めを用いるようにし、特に長時間外にいるときはSPF値の高い日焼け止めを塗り、帽子やサングラスをかけるなどのケアを行ったり、普段から美白成分の入ったスキンケア剤を用いたりしての予防に努めましょう。肌質は遺伝しますので、ご両親やご兄弟に“シミ”が多い人は特に注意するようにしましょう。
徳永 理恵
逗子メディスタイルクリニック 院長