かつて眞子さまも診断された「PTSD」…発症しやすい人の決定的特徴【精神科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

私たちの心には、決定的に傷ついたり壊れてバラバラになってしまったりしないように、心を守る防衛機能が備わっています。しかし、時として心の処理能力を上回るショックを体験し、回復できなくなるケースも珍しくありません。眞子さんもかつて、小室圭さんとの結婚をめぐる報道などから精神的苦痛を受け、「複雑性PTSD」と診断されたといいます。さまざまな症状を引き起こす“深い心の傷”について、精神科医・庄司剛医師が解説します。

心の処理能力を超える「トラウマ」がPTSDをもたらす

誰もが防衛によって心を守っていますが、守り切れないほどのショックや恐怖を受けると心が傷ついて回復できなくなってしまいます。この心の傷を身体的な外傷になぞらえて「トラウマ(外傷)」と呼んだりします。

 

フロイトはトラウマというのは心の保護シールドに開いた穴だと表現しました。通常のショック、心の傷であれば時間が経つにつれ心のなかで処理され、生々しいものが徐々に記憶として語れるようなものに変わっていきます。シールドにかさぶたができて、だんだんと治っていくようなイメージです。

 

ところが心的トラウマと呼ばれるような深い傷は、心の処理能力では処理し切れないほど大きく深いため、いつまでも心の傷として残り続けます。このようなトラウマが適切に処理されないためにさまざまな症状を呈する神経症を心的外傷後ストレス障害(PTSD)といいます。

 

PTSDの具体的な症状としては、恐怖の場面を生々しく繰り返し思い出して「再体験」してしまうフラッシュバックや悪夢、トラウマにつながる記憶や気持ちを思い起こす場面や場所を避ける「回避」、神経が常に高ぶり眠れなかったり、ちょっとした物音にも過敏にビクッとしたりしてしまうような「過覚醒」などが挙げられます。

トラウマの原因、トラウマが起こりやすい人とは?

トラウマの原因となる体験には、生死の境目となるような衝撃的な体験と、長期にわたるストレス体験の2つがあります(後者は長期にわたり慢性的に継続される複雑性トラウマと、幼少期などの発達段階に起こる発達性トラウマに分ける場合もあります)。

 

生死の境目となるような衝撃的な体験には、地震や津波などの自然災害や、事故・事件などに巻き込まれたケースがあります。例えば、東日本大震災のときに目の前で家族や友人が津波に流されていくのを目撃してしまったというようなものです。世界の終わりのような恐怖と不安に襲われ、安心感を取り戻すことができなくなります。さらにいえば、「なぜ助けられなかったのか」「自分だけ助かったことが申し訳ない」と自分を責め続けるようになり、心の傷をより深くしてしまいます。

 

このような体験は危険と隣り合わせの職業に就いている消防士や警察官、自衛官などにも起こりやすいといわれます。

 

これに対して長期にわたるストレス体験には、監禁、身体的虐待やネグレクトなどの行為、いじめなどがあります。

なぜ、トラウマを乗り越えるのが難しいのか?

トラウマになるできごとは、トラウマを抱えている人にとっては過去の終わったことではなく、現在進行形なのです。日常的には自分の心を守るために目をつぶったり無視したりして生きていますが、映画で津波の場面が出てきた場合など、なにかをきっかけにフラッシュバックで鮮明によみがえり、今現実に起こっているように追体験します。

 

トラウマを乗り越えるには、衝撃的な体験を思考に変換し、過去の話として処理していけるようになる必要があります。しかしこれはとても難しいことです。なぜなら、トラウマを受けた心は、赤ちゃんのときの原始的な状態に陥っており、体験を理解して過去の自分の話として考えられなくなっているからです。つまり、不快な感情に留まっていて、現実を受け入れる思考に変換できない状態にあるということです。

 

これによって激しい感情が溢れ出し圧倒されてしまい、理性的で現実的な通常の判断能力が失われてしまいます。

 

幼いころに衝撃的な怖い体験をしたりすると、保護シールドの一部が薄くなり、そこに似たようなことが起こると簡単に穴が空き、大きなトラウマになったりします。

 

トラウマとは、世界やほかの人間に対する安心感や信頼感を失った状態です。「一寸先は闇」というように現実には明日にも大地震が起きる可能性もありますし、事故に遭うかもしれません。先のことは誰にも分からないのです。

 

だからといって、「大地震がきたらどうしよう」「事故に遭うかもしれないから外出できない」など、先々のことを考えビクビクしていては生きていけません。ですから私たちは、とりあえずこの先も安全・安心だと分からないけれども信じて生きているわけです。その世界や人に対する信頼感をどう取り戻すかが治療の肝になってきます。

 

 

庄司剛

北参道こころの診療所 院長

 

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    北参道こころの診療所 院長 

    1999年に筑波大学医学専門学群卒業後、東京大学医学部附属病院心療内科、長谷川病院精神科を経て2008年~2013年までロンドン、タビストッククリニックに留学。

    帰国後、心の杜・新宿クリニックに在籍し、2021年より医療法人イプシロン北参道こころの診療所に勤務。

    <所属学会>
    日本精神分析学会
    日本精神分析的精神医学会
    日本心身医学会
    日本精神分析協会訓練生

    <資格>
    精神保健指定医
    BPC(British Psychoanalytic Council) Psychodynamic Psychotherapist
    TSP(The Tavistock Society of Psychotherapist) メンバー

    著者紹介

    連載知らない自分に出会う精神分析の世界

    ※本連載は、庄司剛氏の著書『知らない自分に出会う精神分析の世界』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    知らない自分に出会う 精神分析の世界

    知らない自分に出会う 精神分析の世界

    庄司 剛

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自分でもなぜか理解できない発言や行動の原因は、過去の記憶や体験によって抑え込まれた自分の本来の感情が潜む「無意識的な領域」にあった! 憂うつ、怒り、不安、落ち込み…。理由の分からない心の動きを精神科医が考察。…

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