人事院から国家公務員試験の結果が発表されました。合格者の出身大学とその推移をみていくと、日本の行く末を心配せざるを得ない状況がみえてきました。
国家公務員試験合格者ランキング…1位「東京大学」に見る、日本の危ない兆候 (写真はイメージです/PIXTA)

国家公務員の長時間労働問題…東大のキャリア離れの引き金に

これほど合格者を減らしているのは、東大だけで、ほかは年度によって上下はあるものの、それほど目立った動きはみられません。これを「東大の凋落」とみる人はほとんどいません。そこで論じられるのは、「東大のキャリア離れ」です。東大生は、あえて官僚を目指さなくなっているのです。

 

理由はいくつか考えられ、2010年代、景気回復によって、民間志向の卒業生が増えたこと。また国家公務員の長時間労働が大きく報じられ、忌避感が強まっていることが一因です。

 

人事院『令和3年人事院勧告』によると、他律的業務の比重が高い部署の職員は8.7%、また上限を超えて超過勤務を命じられた本府省の他律部署に限ると15.7%に上ります。1ヵ月に100時間未満の上限を超えた職員が7.8%、2〜6ヵ月平均で80時間以下の上限を超えた職員は10.4%だったといいます。

 

特に国会開催中、夜遅くまで明かりがついている官庁街を歩いたことがある人もいるでしょう。「こんな時間まで働いているんだ……」という驚きを覚えたに違いありません。

 

長時間労働に見合う給与を手にしているのであればいいのですが、基本的に公務員の給与は民間準拠。人事院『令和3年国家公務員給与等実態調査』によると、職員25万3,000人の平均給与(平均年齢42.7歳、平均経験年数20.9年)は、基本給33万6,333円、諸手当を入れて41万4,729円。手取り額は30万~32万円ほどです。

 

民間企業の給与と比較すると、「大企業>国家公務員>中小企業」となります。公務員の給与は、頑張りによって天井知らず、というわけにはいきません。それであれば民間企業を選ぶほうが賢い選択だといえるでしょう。

 

東大のキャリア離れが顕著になっているいま。「国家公務員の出身大学の多様化」として喜ぶ論調もみられますが、危機感を覚えている人もいます。

 

国家公務員は国家を運営する仕事をしている人たち。国がどうなるのか、彼らの能力次第、という部分もあるわけです。そこで日本のトップ大学のひとつである東京大学出身者から敬遠されるとなると、どうなるのでしょうか。最悪、日本の国力の低下につながる、といわれているのです。

 

東大のキャリア離れは、「日本凋落」という、私たちにとっても悲劇的なことの裏返しかもしれず、無関心ではいられない問題かもしれません。