コロナ禍が賃貸経営にもたらした5つのこと
丸2年間のコロナ禍が東京での不動産経営にどんな変化をもたらしたのかをみていきます。
外国人は減った
コロナ禍では、多くの人の行き交いがウイルス蔓延の引き金になるため、世界で一斉に、国境を越えての行き来を制限しました。
国によってコロナへの制限度合いが違うため、今までのような自由な行き来が難しくなると判断した多くの外国人留学生・外国人労働者たちは、一旦、母国へ戻る選択をしました。また、海外から駐在という形で日本にいた外国人ファミリーなども、企業要請で母国に戻った方が多くいます。
これらの外国人たちは、コロナが終焉または落ち着けばふたたび東京に戻ってくる可能性が高く、あくまで、その時点では、どうなるかがわからなかったコロナに対する、適切な対処として帰国をしたに過ぎません。
そのため、外国人の入居者が出ていったことのマイナス分は、将来、取り返せる可能性が高いことと、減った外国人を上回るほどの若者と社会人が常に東京に流入しているため、賃貸経営に大きな影響は出ていないことがわかります。
人は地方に「わざわざ」行かないことがわかった
ネットニュースやテレビ報道では、都会の3密を避けるために「テレワークをしながら田舎に住む暮らし方」が喧伝されていましたが、実情は、例年通りに都心部に人が大きく移動していることがわかります。
ただ、小さな子供のいるファミリー層は、ニュースにあったように、都心部から近郊や地方、都道府県から他府県などに移る選択をしたケースもあるようです。就学前の小さな子供がいる家庭では「子供がコロナの意味が分からないため、自粛を強制できないこと」「家の中に閉じ込めておくのがかわいそうであったこと」「小さな子供はマスクをちゃんとしていられないこと」「保育園、幼稚園などが運営していないため、預かり保育ができなくなったこと」「リモートワークにより部屋数が足りなくなったこと」などの複数のコロナ禍の影響により、より広く・人が少なく・部屋数が多く取れるエリアへの移住が必要になる場面も多くあったことでしょう。
しかし、すでに都心部にいる学生や独身層は、繁華街などへの外出ができなくなったくらいで、それ以外はネットを活用してライフスタイルシフトに成功している方が多いようです。
仕事や学校はオンライン化が一気に進み、通勤や面倒な人付き合いを減らすことができたため、若年層にとっては抵抗のないシフトであったことも、理由として大きいでしょう。
このように、人は「何となく都会へ出る・居る」ことはあっても、便利さを捨ててわざわざ地方へはなかなか行かないことから、東京での賃貸経営には影響が少なかったといえます。
利便性重視の住まい選びは変わらなかった
コロナ禍になって多くの人が痛感したと思いますが、人付き合いを減らす・飲み会などを減らすことには代替案もあり何とか我慢ができても、生活が不便になることには閉口したのではないでしょうか。
電車やバスの間隔があいて通勤が不便になる、スーパーへの入店や買い物を制限される、通販商品の配達が遅れがちになるなど、たとえコロナが理由だったとしても、「以前よりも不便」になることには、おおいに不満を感じたはずです。
コロナ禍をきっかけにテレワークは定着しつつありますが、完全テレワークというよりも、通勤頻度が減ったというレベルです。そのため、多くの企業では依然として通勤の必要性もあるため、人々の考えは
- 「公共交通機関を利用しないで会社に行けるエリアに住む」
- 「生活に便利なものが、すぐ近くにあるエリアに住む」
という利便性を重要視した住まいへの考え方にシフトしつつあります。これらは都会在住者にはもともとある考え方ではありますが、コロナ禍による影響で、より高いレベルで利便性を求めるようになったと言えます。
人が「家」に求めるものが変わった
コロナ禍の自粛によって家にいる時間が長くなると、自分時間・家時間の長さと対面することになります。テレワークによって、毎日慌ただしく仕事に行き、人付き合いをするという要素が少なくなると、余った時間の多さに気づきます。
テレワークで毎日仕事があっても、コロナ禍ではそれ以外の時間も自宅と自宅付近で過ごすことになりますので、自然と1人時間の過ごし方や家族との過ごし方、家の中のあり方などに思いを巡らせるようになります。
また、コロナ禍のソーシャルディスタンスにより、従前と全く同じようには働けなくなったことや、気軽な転職ができないことで、消費とお金に関しても興味がわくようになります。
その結果、最も長く滞在することになる「家」を含めたライフスタイル全般への考え方が変わり、家に対して、より快適性・利便性・居住性を求めるようになります。さらに、外部でのリフレッシュが出来ないことから、家の中での癒しを求める傾向も見られます。
オフィスや通勤はゼロにはならないことがわかった
コロナ禍によるソーシャルディスタンスと3密を守るため、企業はリモートワークの導入を一気に進めました。しかし、実際にはテレワークとオンラインミーティングでは業務をカバーしきれない部分もあり、人数調整をした出勤で、足りない部分を埋めるというスタイルをとる企業も少なくありません。
もともとリモートワークは、働き方改革の一環として日本政府がプッシュをしていたものですが、突然のコロナ禍発生により、一気に働き方を変更できるほどには、デジタルコミュニケーションの実体が追い付いていない状態です。
今後、ニューノーマル社会に向けたデジタルシフトが完成するまでに、どれくらいの時間がかかるのかは未知数ですが、当面はコロナが終焉しても今と同じような状態がしばらく続くと予想されます。
その結果、デジタルトランスフォーメーションへの情報や対応が早い都会にいる方が、便利で快適であり、それは、コロナが起きる前と同じということになります。