岸田総理の「資産所得倍増」といった発言など、最近、国をあげて投資を促す動きが活発になっています。ただそんな動きに対して、一般の人は冷ややかな反応をみせています。なぜなのか、考えてみましょう。
岸田総理「資産所得倍増」掲げるも、平均給与433万円の日本人「そもそもお金がない」

給与があがらない日本…どこに投資するお金があるのか?

どちらにせよ、資産所得倍増というからには、投資が前提。それには投資をするための元金が必要です。

 

そのような話をすると、「そもそも投資するお金なんてない!」という本音が聞こえてきそうです。

 

国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査』によると、日本人の平均給与は433万1,000円。男女別にみると、男性532万2,000円、女性292万6,000円。雇用形態別にみると、正社員495万7,000円、非正社員は176万2,000円でした。

 

よく「日本人の給与は30年間上がっていない」といわれていますが、確かに、1990年の平均給与は425万2,000円ですから、まさにその通り。

 

バブル崩壊以降、経済は下降線を辿っていきましたが、その余韻から給与は上がり続け、ピークに達したのは1997年で467万3,000円。以降、2020年までの23年間。その間、前年比プラスを記録したのは8回、前年比マイナスを記録したのは15回。

 

不良債権問題からITバブル崩壊、リーマンショック……2000年代は2007年を除き、毎年給与は下がっていきました。しかし2013年以降、アベノミクス効果で、給与はプラスに転じます。「もしかしたら、平均給与の最高値を超えるのでは」と期待されていましたが息切れ。そしてコロナ禍、さらには昨今の物価高や円安によって、そんな甘い期待は消え去ったといえるでしょう。

 

浮上のきっかけも見えてこないなか、「資産所得倍増」といわれても、誰もピンとこないのは仕方がありません。給与が上がらないなか、投資にまわすほどの余裕はないのですから。

 

それでも昨今「自助努力」が頻出ワードになっています。少子高齢化が深刻化する日本。このままでは国が面倒をみることはできなくなるから、各個人、資産形成に邁進するように、というメッセージで「自助努力」は使われています。

 

「給与を上げることはできない、国も支えてあげることはできない。それでも投資をして資産を築いてもらうほかない」

 

「資産所得倍増」は、お手上げ状態の日本で生きるための、唯一の道なのかもしれません。