岸田総理の「資産所得倍増」といった発言など、最近、国をあげて投資を促す動きが活発になっています。ただそんな動きに対して、一般の人は冷ややかな反応をみせています。なぜなのか、考えてみましょう。
岸田総理「資産所得倍増」掲げるも、平均給与433万円の日本人「そもそもお金がない」

個人金融資産2,000兆円、その多くが預貯金…日本人はそんなにお金を持っているのか?

岸田文雄首相が日本売りの流れから「インベスト・イン・キシダ」と訴え、さらに「資産所得倍増プラン」が飛び出して、物議を醸しました。

 

岸田首相といえば就任当時に掲げていたのが「所得倍増」。今回の演説は、単純に「日本に投資を」と訴えた流れで出てきたもので、「所得倍増」を否定したものではないようですが、いつまでに達成するかなど、明確なプランは示されていません。

 

そもそも資産所得とは、株式などの金融商品や不動産などによって得られる利益のこと。2018年の調査では、1世帯当たり、1年で15万円ほどの資産所得があるそうです(厚生労働省『国民生活基礎調査』2019年より)。それを倍増というわけですから、1世帯当たり30万円にするということ。給与に置き換えると、単純計算、月2~3万円程度の給与アップということになりますから、家計的には大助かり、といったところでしょうか。

 

資産所得倍増は、日本にある個人金融資産は2,000兆円を活用したいという思惑もあるのでしょう。この2,000兆円、その大部分が預貯金で「ただ預けられているだけのお金」といわれていますから、その一部分が動くだけでも大きな効果が見込めます。

 

ただ、一般層の所得倍増というのは無理のある話だと言わざるを得ません。金融広報中央委員会による『家計の金融行動に関する世論調査』によると、1世帯当たりの金融資産は平均1,563万円、中央値で450万円。日本の世帯数は5,572万世帯なので、平均値で計算すると、870兆円となります。一般世帯で持っている資産の合計は、報道でよく目にする2,000兆円の半分にも満たないといえそうです。

 

そもそも金融資産の平均値と中央値の差に注目すると、その差は3倍程度にもなります。つまり一部の富裕層が平均値を押し上げているというのが現実で、一般層の感覚としては中央値のほうが近いのではないでしょうか。

 

そう考えると、個人金融資産は2,000兆円という数字から、「日本人、預貯金はもっている」というイメージは、本当にイメージでしかない、といえるでしょう。