(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の社会保障システムは世界的に見ても充実している。老齢年金もしかりだ。しかし、受給額と支出額にはかなりのギャップがあり、どのようにして補填するかは各個人が十分に対策をしておく必要がある。厚生労働省の資料を基に読み解いていく。

「超・超高齢化社会」となった日本の現状

少子高齢化が進展する日本。65歳以上の総人口は2010年の段階ですでに22.8%だったが、2020年では28.8%に到達。日本の現状は「超高齢社会」と定義されているが、実情は「超・超高齢化社会」といっていい。

 

第二次世界大戦後の第1次ベビーブームにより誕生した1947年~1949年生まれの「団塊の世代」は、現在年金受給世代となっている。一方、現在の年金額を支えているコアな労働層23歳~65歳のなかには、第2次ベビーブームとなった1971年~1974年生まれの「団塊ジュニア」も含まれてはいるが、それをもってしても、日本の高齢者たちの年金を背負うには層が薄い。


このような背景において、実際の年金受給の水準はどの程度なのであろうか?

一般的な会社勤め世帯の年金受給額は、月15万円程度

日本の年金制度は2階建ての構成となっており、国民が一律に受け取ることができる「老齢基礎年金」と、会社員や公務員が受け取ることができる「老齢厚生年金」がある。

 

「老齢基礎年金」の平均受給額は月およそ5万円、「老齢厚生年金」の平均受給額は月およそ15万円が目安といわれている。

 

とはいえ、年金の受給額は納付期間や納付額に応じて変化する。長期にわたり多くの保険料を納付していれば、当然だが受給額はこの数字を上回るし、納付期間が短い、納付金額が少ないといった状況であったなら、平均受給額を下回る。

 

一般的な会社員の世帯における夫婦の受給額合計の平均は、月およそ22万円とされている。


ちなみに、夫婦2人とも老齢厚生年金を受給する場合は、単純計算で月およそ30万円が目安だ。2人とも「老齢基礎年金」のみを受給する場合は月およそ10万円。受給額は働き方や労働期間によって差異があるため、自分の老後資金を確認するためにも、自分の受給額と受給できる時期を「ねんきん定期便」等で、都度、確認しておくことが重要だ。

「足りない老後資金」をどうするか

厚生労働省『令和2年 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、令和2年の厚生年金保険(第1号)受給者は3,581万人、受給者の平均年金額は「14万4,366円」。これまでひとつの目安とされてきた「15万円」からは、じりじり下がっている状況にあるといえる。

 

65歳から5歳刻みでの老齢年金平均月額は下記の通りとなっている。

 

65歳~69歳:143,069円

70歳~74歳:145,705円

75歳~79歳:150,569円

80歳~84歳:159,529円

85歳~89歳:162,705円

90歳以上 :161,506円

 

なお、厚生労働省の『令和2年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)』によると、平均支出額は月額25.5万円。

 

平均支出額は年齢を重ねるほど低くなる傾向にあるものの、平均年金受給額を15万円とすれば、その差は10.5万円。このギャップを埋めるには、就労している段階から老後資産形成を視野に、貯蓄や資産運用に励むことは必須事項といえるだろう。

 

政府もこの状況は十二分に把握しており、つみたてNISA、iDeCoといった資産形成を促す仕組みづくりを進めてきたほか、70歳までの就業機会確保を視野に入れた「高年齢者雇用安定法」の改正にも着手している。もっとも、こちらは事業主側の対応もあるため、実現にはそれなりの調整期間が必要になるだろう。

 

定年退職時期が先に延びれば、老後資金の問題はそれなりに軽減できるが、一方で、どんどんゴールが先延ばしされる就労者側はたまったものではない。

 

「あれほど働いてきたのに、たったこれだけしか年金がもらえないのか」

「65歳のリタイアを視野に入れてきたのに、さらに遠くなるのか」

 

といった切実な声も聞こえる。

 

限界まで疾走した先のゴールが延ばされるのはつらい。その点を踏まえると、「老後」を問題視するだけではなく、自身が「コア労働者層」にある段階から、自身の人生における就労の位置づけについて、よく考えておく必要があるだろう。

 

早期リタイアを目指す「FIRE」に高い関心が寄せられる一方、定年後の起業に情熱を傾ける人も、好きな仕事を生涯続けることに生きがいを見出す人もいる。会社員としての勤務形態についても、就労者と事業主側が折り合い、双方にメリットのあるかたちとなることが望まれる。年齢を重ねた先が「地獄」であってはならない。冷静な現状把握と将来計画により、人生終盤の安心と幸せを明確に描ける人生を目指そう。

 

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