不十分な説明で契約?サブリースは宅建業法の対象外
ただ、サブリースには注意すべき点もあります。なかには悪質なサブリース会社があって、契約内容の説明が不十分だったり、虚偽の説明をして契約を結ばせたり、しばしばトラブルに発展して社会問題にもなっています。
一般的に、築年数の経過とともに家賃相場は下がり、入居者が少なければサブリース会社の収益も減ります。契約上は最初に設定された家賃の保証額が定期的に見直され、オーナーが受け取るリース料が減額されることになっているのに、勧誘時や契約時にこの点についてオーナーが十分な説明を受けていないというケースがあります。
そのため、あとから「こんなはずではなかった」と後悔するオーナーも少なくありません。サブリースに関するトラブルはほとんどがこれに類するもので、十分な説明をせずに一方的に家賃額の引き下げをしたり、サブリース契約を一方的に打ち切るなどの行為に及んだことから、オーナーとのトラブルに発展しています。
マンションや戸建て住宅などを売買する場合、宅地建物取引業法(宅建業法)により、不動産会社は宅地建物取引士による重要事項説明が義務付けられています。
しかし、このように契約トラブルを防ぐための手立てが法律に明記されている一方で、サブリースの場合は「一括借り上げ」という貸し借りの契約のため、宅建業法の対象外であり売買のような厳格な説明が義務付けられていませんでした。
この問題を受けて、国土交通省は2011年(平成23年)に賃貸住宅管理業者登録制度というサブリース業者の登録制度を導入しました。それまで野放し状態になっていたサブリース契約について、国が登録制度を設けることによって業界の健全化を目指すようになったわけです。
しかし、この制度はあくまでも登録制度であり、許認可ではありません。賃貸住宅管理業者登録制度に登録していないからといってサブリース事業をしてはいけないわけではなく、無登録のまま営業をしているサブリース業者も少なくありません。
クレームをいう程度で済めばいいですが、何度も家賃を減額された結果、収入がローンの返済額を下回り、赤字がかさんで、結局、解約せざるを得なくなったというケースもあるのです。さらにひどい場合は、家賃を減額されたせいでオーナーが金融機関への返済が困難になり、物件を手放して自己破産を余儀なくされたという事例まであります。
リスクはオーナーが負う
最近では、国民生活センターが「家賃を減額することが可能なこの仕組みは、リスクを会社から家主に転嫁するもの」と注意を呼びかけています。収益減のリスクは、最終的にオーナーが負っている事実を忘れてはいけません。
国土交通省も2016年から、リース料の減額リスクなど重要事項の説明や、契約成立時に書面を交付し、管理事務を報告することを義務化しました。さきほど解説した賃貸住宅管理業者登録制度もその流れにあるもので、国がここまで動かざるを得ないほど悪質な事例が多発していました。
サブリースの利用において重要なことは「事前確認」です。修繕の保証範囲、保証される家賃額、入居時の敷金、礼金、更新時の手数料など、契約前に条件をしっかりと確認してください。
国土交通省も契約締結にあたって以下の事項をしっかり確認するように注意喚起をしています。いま一度、これらの項目について納得できない部分がないかをチェックし、納得できた場合にのみサブリース契約をするようにしましょう。
【国土交通省のチェック項目】
・サブリース業者から不当な勧誘を受けていませんか?
・サブリース業者の広告はメリットのみが強調されていませんか?
・契約締結前に重要事項説明を受け、契約締結時には書面の交付を受けましたか?
以上の3点です。これらはいずれも借地借家法を根拠としたもので、守っていない場合は法令違反になります。特に1番目と2番目の部分はトラブルに発展する原因そのものなので、十分確認する必要があります。