●22日の米国株は大幅安、一部決算が嫌気され、米利上げの景気への影響にも警戒が強まった。
●想定すべきは米利上げで景気低迷、株安のシナリオと、米利上げでインフレ抑制、株高のシナリオ。
●現時点で株高シナリオを見込むが米国の物価動向や金融当局者発言などを見極めることが大切。
22日の米国株は大幅安、一部決算が嫌気され、米利上げの景気への影響にも警戒が強まった
4月22日の米国株式市場では、主要株価指数が大きく下落する展開となりました。ダウ工業株30種平均は、前日からの下げ幅が一時1,000ドルを超える場面もみられましたが、結局、前日比981ドル36セント安(2.8%安)の33,811ドル40セントで取引を終えました。また、S&P500種株価指数とナスダック総合株価指数も、それぞれ前日比2.8%安、2.6%安と、大きく値を崩しました。
米国では同日、通信大手ベライゾン・コミュニケーションズが2022年通年の売上高予想を下方修正し、クレジットカードのアメリカン・エキスプレスは1-3月期の決算で市場予想を上回る費用を計上しました。これらが、翌週も続く米企業の決算発表への懸念を誘い、改めて米利上げによる景気への警戒につながったことが、主要株価指数の大幅安の主因と推測されます。
想定すべきは米利上げで景気低迷、株安のシナリオと、米利上げでインフレ抑制、株高のシナリオ
S&P500種株価指数を構成する11セクターの動きをみると、4月22日時点で前日からの下落率が大きいのは、総じて景気敏感セクターであり(図表1)、利上げや景気を警戒する様子がうかがえます。そこで、以下、2つのシナリオを想定し、米国株の今後を展望します。具体的には、①利上げが景気を冷やし、株価の調整が続くシナリオ、②利上げがインフレ抑制に成功し、景気を冷やさず株価が上昇基調を回復するシナリオです。
4月21日付レポートで解説した通り、市場は現在、かなり急ピッチの利上げを織り込んでおり、実際の利上げがこのペースで来年まで行われた場合、①のシナリオが実現する公算が大きくなります。景気を犠牲にしてインフレを抑え込む格好になるため、米国では景気低迷を織り込んで10年国債利回りが低下、ドル円は比較的大きくドル安・円高方向に振れ、米国株は低調な動きが続くことが予想されます。
現時点で株高シナリオを見込むが米国の物価動向や金融当局者発言などを見極めることが大切
一方、当面は急ピッチの利上げが行われたとしても、比較的早い段階でインフレのピークアウトが確認されれば、②のシナリオが実現する公算が大きくなります。この場合、その後の利上げペースは緩やかなものとなり、市場の過度な利上げの織り込みも後退すると思われます。米国では期待インフレ率の低下により10年国債利回りの上昇が一服、ドル高・円安の動きも一巡し、米国株は上昇基調回復が期待されます。
なお、弊社は米主要株価指数の年末着地水準について、ダウ工業株30種平均は36,200ドル、S&P500種株価指数は4,700ポイント、ナスダック総合株価指数は14,290ポイントをそれぞれ予想しています(図表2)。現時点では②のシナリオに沿った展開が見込まれますが、この先は、消費者物価指数などの米物価動向や、米金融当局者の利上げに関する発言などから、いずれのシナリオの蓋然性が高いかを探ることになります。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株の見通し ~利上げを巡る「2つのシナリオ」を考える【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト