●国内では、来週から3月期決算企業の決算発表が本格化、今年度の業績予想に注目が集まる。
●ロシア問題、原油高、円安、中国ロックダウンは業績への影響が予想され、各企業で検証が必要。
●全体的に控えめな業績予想は織り込み済み、先の4点の影響をにらみ当面は個別物色の動きか。
国内では、来週から3月期決算企業の決算発表が本格化、今年度の業績予想に注目が集まる
国内では、来週から3月期決算企業の決算発表が本格化します。東京証券取引所が公表している4月14日時点のデータによると、東証プライム市場に上場する3月期決算企業について、決算発表日が確認できる企業は1,218社です。このうち、すでに2社が決算発表を終え、今週は10社が決算発表を予定しています。また、来週以降は図表1の通りで、5月第2週が決算発表のピークとなります。
足元ではウクライナ情勢の混迷が続き、米金融政策の正常化が進むなど、世界的に経済情勢や金融情勢の先行きが見通しにくい状況にあります。こうしたなか、国内企業は決算発表で今年度の業績について、どのような見方を示すのか、投資家の注目が集まっています。そこで、今回のレポートでは、企業の業績予想に関して、検証すべきチェックポイントを整理します。
ロシア問題、原油高、円安、中国ロックダウンは業績への影響が予想され、各企業で検証が必要
今年度の企業業績に影響を与える可能性が高いものとして、主に、①ロシアへの経済制裁、②原油など資源価格の上昇、③円安の進行、④中国上海市などの都市封鎖(ロックダウン)、が考えられます(図表2)。なお、これらの業績への影響は、当然ながら業種によって濃淡があり、また、企業がどの程度、長期化や悪化を見込むか、その想定によっても異なるため、個々の企業の見解をしっかり見極める必要があります。
まず、①に関し、企業にロシア関連の事業がある場合、損失や引当金の金額と、全体に与える影響を確認することになります。また、ロシア産の希少金属(レアメタル)を使用している企業については、今後の調達に支障がないか否かも注意点です。②は、一般に原材料費の高騰という点で素材や化学などには向かい風となり、エネルギーや商社などには追い風とされますが、やはり、個社別に状況を検証していくことになります。
全体的に控えめな業績予想は織り込み済み、先の4点の影響をにらみ当面は個別物色の動きか
次に、③については、今年度の想定為替レートが注目されます。例えば、輸出企業の想定為替レートが、実勢よりもドル安・円高水準に設定された場合、将来的に業績予想の上方修正余地が広がると考えられます。一方、輸入企業にとって、円安進行はコスト増要因となりますが、基本的には、輸出企業、輸入企業にかかわらず、為替レートに大きく左右されず、安定的な業績予想が示されるか否かがポイントになります。
そして、④は、すでに一部企業で現地生産停止の動きもみられ、ロックダウン長期化なら影響拡大の恐れもあることから、企業が想定するリスクシナリオの検証が必要となります。以上4点を踏まえると、企業の今年度の業績予想は、総じて控えめな内容が予想されますが、市場ではほぼ織り込み済みと考えます。当面はこれら4点が企業業績に与える影響の濃淡で、個別物色の動きが強まる展開が予想されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『国内企業の「決算発表」直前のチェックポイント【ストラテジストが解説】』を参照)。
(2022年4月18日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト