「相続申告は年1件程度」“普通の税理士”は平然と…
●入院やホーム入所以後の出金が多くないか
本人は病院に入院、もしくは老人ホームに入居しているのに多くの出金がされている場合、出金の主は子どもや妻であることがあります。
老人ホームの入所費用は自動引き落としであることが多く、入院はというと、高齢者は自費負担のほとんどないことが多いです。
つまり「そんなにお金を引き出す必要はないのに、なにに使っているのか?」と疑われることになります。
また、「本人から『預金を出金して子どもや孫に贈与をしておいてやってくれ』と指図されて、代わりに子どもが振り込んだのだ」という主張をしても、「果たして本当に贈与指示をしたのだろうか?」と問題になることがよくあります。
そのため、証拠作りが極めて重要です。贈与証書や贈与契約書は作っておかなければなりません。
●あまり知られていないが…過去10年以内の本人や妻・子・孫名義の預金の入出金履歴を、当局は無断で入手できる
平成15年から入手できるようになっています。随分前から可能なことであるのに、未だに「通帳を廃棄しておけば分からない」「過去のことなんてバレないよ」と税理士までもが言っているのです。
一口に税理士といっても、「相続申告は年1件程度しかやらない」という経験の少ない方がほとんどです。彼らは最近の傾向をご存じありません。そのため昔の発想で「過去3年分くらいしか遡って調べることはない」などと平然とおっしゃいます。
現在税務署がおこなうのは、電脳調査であると認識しておきましょう。
『税理士意見書面』添付制度と期待できる効果
そこで、プロテクションの役割が非常に大切になってきます。
相続人の税務調査リスクを軽減するために依頼税理士に期待したいのが、平成13年から始まった『税理士意見書面の添付』制度の活用です。
『税理士意見書面』には、税務署が疑義を持ちそうな事柄について、あらかじめ検証した財産書類・経緯・検証結果などを記載します。
ここで、書面添付制度についてフローを確認しましょう。
まず、納税者(相続人)が税理士に依頼をします。そうすると税理士により、委任状である『税務代理権限証書(税理士法第30条)』が作成されます。これは基本中の基本です。税理士はこの証書を添付し、相続税申告書を提出します。
その際、必須ではありませんが税理士の裁量で、「税理士法第33条の2の書面(=税理士意見書面)」も添付することができるのです。