●日経平均は先週まで9連騰、ウクライナ侵攻前の水準から、すでに1,700円ほど高いところに位置。
●ウクライナ情勢に関し日経平均は冷静に現状を認識、ボラティリティー・インデックスも織り込み示唆。
●株価は短期調整でも戻り基調維持、日経平均の年末予想値は小幅に上方修正し30,800円。
日経平均は先週まで9連騰、ウクライナ侵攻前の水準から、すでに1,700円ほど高いところに位置
日経平均株価は3月25日、28,149円84銭で取引を終え、3月14日から9営業日連続で上昇しました。ロシアは2月24日にウクライナへの軍事侵攻を開始しましたが、その前営業日である2月22日の日経平均株価の終値は26,449円61銭でした。したがって、足元の株価は、ウクライナ侵攻前の水準をすでに回復し、さらに1,700円ほど高いところに位置していることになります。
このような動きを踏まえると、日経平均株価はウクライナ情勢に関する材料を、一通り織り込んだように思われます。なお、ウクライナ情勢の現状をみる上では、①停戦交渉、②ロシアへの経済制裁、③原油価格、④主要国の経済成長、の4つが重要なポイントと考えます。これらに対する市場の現状認識は、おおむね図表1の通りで、いずれもかなり厳しいものと推測されます。
ウクライナ情勢に関し日経平均は冷静に現状を認識、ボラティリティー・インデックスも織り込み示唆
それにもかかわらず、日経平均が足元で上昇しているのは、相場特有の性質によるところが大きいと考えます。すなわち、個々の懸念材料について、市場がそれらの現状を冷静に認識できれば、過度な不透明感が払拭され、状況の改善を待たずに株価が上昇することがあります。今回のケースでは、停戦合意が遅れても、ロシアへの経済制裁が長期化しても、市場はそれらをすでに認識しているため、株価が上昇した、ということになります。
なお、ウクライナ情勢の織り込み度合いをみる上で、日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)が参考になります。この指標は、日経平均株価の将来の予想変動率を示すもので、株価が下落すると上昇し、上昇すると下落する傾向があります。ここ数年は、コロナ・ショックの時期を除き、30が上値の目途となっており、今回も30に接近した後、低下していることから、日経平均株価はウクライナ情勢を一通り織り込んだと判断できます。
株価は短期調整でも戻り基調維持、日経平均の年末予想値は小幅に上方修正し30,800円
ここで改めて、日経平均株価のチャートをみると、連日の上昇で、3つの「窓」が開いていることが分かります(図表2)。株価の上昇局面で窓が開くと、その後は株価が反落し、窓を埋める動きになりやすいというのが一般的な解釈です。仮に反落し、3つの窓を全て埋めた場合、株価は25,800円付近まで切り下がることになります。あくまで1つの目安ですが、短期的な調整リスクは意識しておいた方が良いと思われます。
しかしながら、前述の通り、ウクライナ情勢に関する材料は、一通り織り込み済みと思われるため、弊社は、日経平均株価が短期的な調整を経た後でも、戻り基調は維持されるとみており、年内に30,000円台を回復する公算が大きいと考えています。また、年末の予想水準については、3月23日付で、従来の30,600円から30,800円へ、小幅ながら上方修正しています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価は「ウクライナ情勢の織り込み」を終了か 【ストラテジストが解説】』を参照)。
(2022年3月28日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト