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アバターやバーチャルキャラクターの企業活用事例
「アバターやバーチャルキャラクターは、娯楽に使うもの」そのような感覚は、もはや古くなりつつあるかもしれません。
近年、アバターやバーチャルキャラクターを企業が活用する事例が増えています。これらをうまく取り入れることは、企業にとってのメリットが少なくありません。
はじめに、企業がアバターやバーチャルキャラクターを活用した事例を2つ紹介します。
新卒採用にアバター面接を取り入れる企業
インターネットのサーバー事業などを手掛ける株式会社ビヨンドが、アバターを使ったオンラインでの採用を行うとして話題となっています。
バーチャル面接では、アバターやボイスチェンジャーを使い、性別や学歴などの個人情報を明らかにせずに採用面接を受けることが可能です。そのため、より人間性を重視した採用をすることができるとしています。
アバターは利用者がそれぞれでカスタマイズすることが可能で、どのようなアバターで採用面接に臨むのかという点も選考基準に含まれるようです。
株式会社ビヨンドの場合、バーチャル面接を通過した学生は、その後オンラインで通常の最終面接を行い、履歴書も提出します。しかし、最終面接までアバターを使って行う企業が登場する未来は、それほど遠くないかもしれません。
VR空間への来場者向けにアバター接客を取り入れる企業
NTTは、VR空間の来場者に対し、アバターで接客する取り組みを始めると発表しました。
アバターを通じて接客をするのは、病気や障がいを抱えて外出が難しい人などです。
これまで、外出が難しい人が仕事に就くことは容易ではなく、ましてや接客の業務に従事することのハードルは決して低いものではありませんでした。
しかし、アバターを通した接客であれば、さまざまな事情を抱えた人が業務に従事することが可能です。VRや拡張現実の技術を使い、障がい者の就労機会を拡大することが期待されています。
アバターやバーチャルキャラクターを活用するメリット
企業がアバターやバーチャルキャラクターを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットとして、次の5つを紹介します。
①企業イメージの向上につながる
アバターやバーチャルキャラクターを活用することは、企業イメージの向上につながります。なぜなら、新たな技術を取り入れて今後さらに発展する企業であるとの印象を与えることができるためです。
特に、これまで何となく固いイメージを持たれていた企業がこのような新たな技術を取り入れることによって、若者など流行に敏感な層の心を掴みやすくなるでしょう。
企業イメージの向上は、商品やサービスの販売を押し上げる効果のみならず、採用時にもプラスに働く効果を期待できます。
②感染症蔓延時などでも業務を継続できる
新型コロナウイルスの蔓延により、業務に遅延が生じたり、接客の機会を逸したりしてしまった企業は少なくないことでしょう。
新型コロナが収束しても、今後いつまた未曾有の事態が訪れるのか、正確な予測は誰にもできません。
日ごろからアバターやバーチャルキャラクターを通じて接客をする仕組みなどを整えておくことで、万が一また感染症が蔓延した際などにも、業務への影響を最小限に食い止めることが可能となります。
③全世界の顧客へサービスを提供しやすくなる
VR空間などを活用したオンラインサービスであれば、国や地域を問わずに自社のサービスを提供することが可能となります。
アバターやバーチャルキャラクターを活用することで、従来のインターネットショッピングよりも企業を身近に感じてもらい、広範囲な顧客にアプローチすることができるでしょう。
④距離を問わず優秀な人材を採用できる
アバターやバーチャルキャラクターがVR空間上のオフィスに出社するなどの仕組みを整えることで、現実のオフィスとの距離に縛られることなく、優秀な人材を活用することが可能となります。
テレワークの拡大ですでにオフィスを都心から移転する企業も出てきていますが、VR空間やアバターの活用が進むことで、賃料の高い都心からオフィスを移転する企業はさらに増加することでしょう。
⑤障がい者など多様な人材の活用が可能になる
アバターやバーチャルキャラクターを活用することで、障がいや病気を抱えた人など多様な人材を活用することが可能となります。
障がいのある人のなかにも働く意欲を持つ優秀な人は多く、こうした多様な人材を活用することで新たな雇用の創造へとつながるでしょう。
活用の際のデメリットや、注意すべき点はあるのか?
アバターやバーチャルキャラクターを企業が取り入れる際には、次の点に注意しましょう。
従業員の管理体制を適切に整える必要がある
店舗にいる接客スタッフが顧客と何らかのトラブルになった場合、その場にいる上司など他のスタッフがフォローをするなどの対応が可能です。
また、勤務時間中であるにもかかわらず頻繁に休憩を取っている従業員や毎日のように残業をしている従業員がいれば、何らかの対応を取ることでしょう。
しかし、リモートワークをしている従業員がアバターやバーチャルキャラクターを活用して接客をしている場合には、その接客状況や勤務体制が見えづらくなります。
接客を1人に任せるのかもしくは他のスタッフと2名以上の体制とするのかといったフォロー体制の構築や勤務時間の把握など、管理体制を適切に整える必要がある点が、アバターなどを活用する企業の課題の一つです。
ITスキルによっては使いこなせない可能性がある
企業側のITスキルによっては、アバターやバーチャルキャラクターを使いこなすことができず、導入や運用に手間やコストがかかってしまいます。
また、顧客候補やアバター面接を行う際の面接希望者のITスキルが高くない場合には、自動的に顧客や採用応募者がふるいにかけられてしまうこととなるでしょう。このふるいが意図したものでないのであれば、電話や対面など従来どおりの方法で対応する道も残しておくことなどを検討すべきであるといえます。
著作権や商標権に注意する
アバターやバーチャルキャラクターは、ユーザーが任意に作成できることが多いでしょう。
なかには、既存のアニメキャラクターに似たキャラクターを作り、自己のアバターとして活用する人もいるかと思います。
しかし、たとえば企業の顔として活動する従業員のアバターが既存のアニメキャラクターに酷似していた場合などには、著作権や商標権など他者の権利を侵害したとして、トラブルに発展してしまうかもしれません。
無用なトラブルを避けるため、自社の名を冠した従業員が利用するアバターを事前に確認するなどの対応が求められます。
法整備が追い付いていない
アバターやバーチャルキャラクターを活用した活動には、法的な整備が追い付いていない場合があります。
たとえば、営業にあたって許認可が必要な業態の中には、許可の要件として一定の管理者が営業所に常駐することなどを求めているものが少なくありません。この「常駐」は、オンラインでの出社は認められないものが大半です。
その他にも、いざトラブルに発展した際、過去の判例がなく法的な判断に迷う場合もあることでしょう。アバターやバーチャルキャラクターの活用にあたっては、ITに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
西尾 公伸
Authense法律事務所 弁護士
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