●日経平均の長期上昇トレンドを形成する下値支持線は相応に強く、現在25,000円付近にある。
●25,000円を大きく下抜けた場合、次の目途は24,500円や23,600円が意識されやすいとみる。
●ただ流動性相場継続で長期上昇トレンドは維持、年末は29,500円へ、弊社予想は30,600円。
日経平均の長期上昇トレンドを形成する下値支持線は相応に強く、現在25,000円付近にある
2月2日付レポート『日経平均株価の現在の立ち位置』で解説した通り、日経平均株価は、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ上値抵抗線と、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線によって、上昇トレンドが形成されています(図表1)。この下値支持線は、3月末時点で25,000円に位置しており、足元の日経平均株価を支える水準と解釈できます。
ただ、ウクライナ情勢が混迷し、世界的に株安が進行するなかで、日経平均株価は3月8日と9日の両日、25,000円を下回って取引を終えました。なお、日経平均株価は2020年の春先にコロナ・ショックが発生した際も、下値支持線を割り込んだ経緯があります。しかしながら、その後は下値支持線を回復し、上昇トレンドは維持されたことから、この下値支持線は、相応に強いものと考えます。
25,000円を大きく下抜けた場合、次の目途は24,500円や23,600円が意識されやすいとみる
ただ、ウクライナ情勢の先行きが見通しにくい現状、日経平均株価がこの先、一時的に25,000円を大きく下回る展開となる可能性も否定できません。そのため、次の下値目途をあらかじめ確認しておくことは、冷静に相場を考える上でも必要と思われます。なお、相場の不透明感が強まった場合は、より客観的な水準が下値目途として意識されやすくなるため、その点を踏まえて水準を確認します。
日経平均株価の直近高値は、2021年9月14日の30,670円10銭です(終値ベース、以下同じ)。一般に、直近高値からの下落率が20%を超えると「弱気相場」入りとされるため、その目安となる24,536円08銭が、まずは下値目途として意識されやすいと考えます。また、コロナ・ショック後の安値(2020年3月19日の16,552円83銭)から、昨年9月高値までの上昇幅を、半値押した水準である、23,611円47銭が、その次の目途として注目されやすいと思われます。
ただ流動性相場継続で長期上昇トレンドは維持、年末は29,500円へ、弊社予想は30,600円
ここで、改めて日米欧の中央銀行の総資産残高に目を向けると、2008年のリーマン・ショック以降、残高は増加し続けており、現在25兆ドル近くに達しています。日経平均はこの間、大幅な下落を何度も経験しましたが、これら潤沢な流動性が緩衝材となり、下落後の反発を繰り返し、長期的な上昇トレンドを形成してきました。弊社の試算では、年末までの総資産残高はほぼ横ばいとなり、流動性相場は続く見通しです(図表2)。
そのため、日経平均の長期上昇トレンドは維持される公算が大きく、25,000円を割り込んでも、反発の余地は残ると考えています。長期上昇トレンド継続の場合、年末時点で、上値抵抗線は32,650円、下値支持線は26,350円に位置しているため、日経平均株価は年末にかけ、まずは両線の中央値である29,500円あたりを目指す展開が予想されます。なお、弊社は年末の着地を30,600円水準に設定し、同じく株価の持ち直しを見込んでいます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の下値目途と予想される年末着地水準』を参照)。
(2022年3月14日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト