娘の心に深く食い込み、人格さえ蝕む母の“毒”。 その呪縛から脱し、人生を取り戻すための遥かなる道のりとは。 本記事では、埼玉工業大学心理学科教授の袰岩秀章氏が、実際のカウンセリング事例をもとに「心の解毒」とセルフケアのメソッドを紹介する。
「どうせあたしが悪いと言うんでしょう」…臨床心理士が解説「子どもを嫌悪する毒親」の心情 (※写真はイメージです/PIXTA)

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母親が語る出産の記憶「思い返すと今もぞっとします」

子どもや赤ん坊という生き物が苦手、というより嫌悪している毒親もいる。

 

「あたしはもともと子どもや赤ん坊ってのは好きではありませんでした。ですから娘が生まれたときに看護師さんから可愛い女の子の赤ちゃんですよとか言われて赤ん坊の顔を見せられたとき、思わず悲鳴を上げそうになりました。嬉し泣きをしているふりをしてごまかしましたよ。あんな醜い生き物が自分のおなかに入っていたなんて……、今もぞっとします」

 

赤ん坊が気持ち悪かった、という感想は時々聞く。顔がくしゃくしゃだったとか、おさるさんみたいだった、言われているほど可愛くなかった、という本音もよく聞く。お産が大変で、可愛いとか可愛くないどころではなかったという人もいる。

 

しかし悲鳴を上げそうになるくらい赤ん坊を嫌う人は珍しい。

 

「これが男の子だったらまた違ったかもしれないと何度も思いました。よその男の子は、可愛いとか、かっこいいと思ったことはあるんです。男の子は赤ん坊にしたってしっかりというかがっちりというか、少々のことでは壊れそうにないですよねえ。何でこう女というか、女の子ってのは、大きくなっても可愛ぶったりめそめそしたりするんでしょうね……」

 

男の子が生まれたなら生まれたで、溺愛するかしてやはり毒親になっていたのではないか。子どもに対する見方というのが、ペットか玩具に対するもののように聞こえる。

「素直に喜ぶとは、一体…」主治医の抱いた疑問

「あたしは男兄弟ばかりで育ちましたが、女の子は手がかかるってずいぶん親に言われたものです。男の子はひっぱたこうがどつこうが放っておこうが育つが、女の子は手を上げれば泣く、ほうっておけば泣く、きれいな服が欲しいと言って泣く、本当に面倒だ、と言われていたので、親の作るものはおいしいおいしいと食べ、買ってくれるものには文句ひとつ言わず、それはもう素直に育ったんです。

 

ですがこの子を見た瞬間ピンと来たんですよ、この子はあたしがしてやることにいちいち逆らうなって」

 

「案の定、何をしてやっても素直に喜ばない」

 

この人が言う素直に喜ぶというのはどういうことなのだろう。どのような反応をしたとしても、女の子だからとケチをつけて、気に入ることなどなかったのではないか。