(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人にとって欠かせない毎日の入浴。寒い冬の時期、暖かいお風呂に入り冷えた体を暖めたくなりますよね。リラックスのため長湯してのぼせたり、うっかり寝てしまってヒヤリとした経験はないでしょうか。お風呂研究20年、3万人を調査した医師が冬場の入浴で気をつけるべき症状、ポイントを解説します。

寒い冬の入浴は「ヒートショック」に注意

②胸が痛む、苦しい、冷や汗が出る

 

寒い冬に暖房の入っていない脱衣室で服を脱ぐと寒さで血圧が急上昇します。これがいわゆる「ヒートショック」です。血圧の急上昇は心臓に負担をかけ、狭心症を起こしたり、場合によっては心筋梗塞を引き起こす可能性があります。

 

対処法:もし浴槽につかっていたら即洗い場に出ます。洗い場は内開きのドアが多く、洗い場で倒れこむとドアが開かず救助が遅れますので、できれば脱衣室まで出るとよいでしょう。安静にして数分で収まる場合は救急車を呼ぶほどではありませんが、狭心症の可能性もあり、なるべく早く家族や付き添いの方といっしょに循環器内科を受診しましょう。脱衣室で休んでいても20分以上胸痛が続くときは心筋梗塞が疑われますので恥ずかしがったり、遠慮せず救急車を呼びます。胸痛が続いている状態で救急車を呼んで受診して迷惑がられることは一切ありません。

 

③気分が悪い、吐き気がする

 

これも熱中症の初期症状や、狭心症や心筋梗塞の症状である可能性もあります。対処は②と同様にまずは浴槽から出るようにします。

 

④急な激しい頭痛、手足のしびれ、力が入らない、ろれつが回らない、口角からよだれが漏れる

 

入浴の前後でこのような症状が1つでも急に起こったら脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)などを疑います。くも膜下出血や脳出血は頭痛を伴うことが多いのですが、脳梗塞は手足のしびれや力が入らないという症状が主になり、頭痛はないことがほとんどです。「疲れかな?気のせい」とか、「そのうち治るだろう」ということでそのまま入浴しつづけてしまうと、体に力が入らず立ち上がれなくなり、浴槽から出られなくなり溺れてしまう可能性があります。

 

対処法:この場合もまずは浴槽から出て可能なら脱衣室に戻りましょう。力が入らず、すでに立ち上がれない場合は、①と同様に浴槽の栓を抜きます。家族が駆けつけて、1人で浴槽から抱きかかえることが難しい場合でも浴槽の栓を抜いて救急車を呼びます。受診せず、そのまま様子を見ていると麻痺の後遺症が残りますので、早急に受診をします。脱力がすぐに回復することもありますが、一過性脳虚血発作といって本格的な脳梗塞の前兆であることが多いです。そのまま放置せず、必ず内科や神経内科、脳外科などを受診しましょう。

入浴事故を防ぐためのポイントとは

このような入浴事故を防ぐためにはいくつかのポイントがあります

 

・脱衣室、浴室のあたため
・湯の温度は40℃まで、10分程度、長くても15分で浴槽から出る
・入浴前にコップ1~2杯の水分摂取
・入浴前の十分なかけ湯

 

リビンクと脱衣室、浴室の温度差は5℃以内とします。暖房設置や浴室の場合、熱めの湯でシャワーを事前に2~3分洗い場にかけ流しをして温めます。血圧を上げないように冬であっても湯の温度は40℃までして入浴前の十分なかけ湯もします。脱水のために血液がどろどろになって血栓ができて血管が詰まらないように入浴前にコップ1~2杯の水分摂取を心がけます。

 

安全な入浴のポイントを守って入浴の健康効果をしっかり享受しましょう!

 

早坂 信哉
東京都市大学人間科学部学部長・教授
博士(医学)、温泉療法専門医

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』掲載の記事を転載したものです。