ファンドの運営者は金融商品取引業の登録業者か?
前回の続きです。では、こうした詐欺的なファンドを避けるためにはどのような点に注意をしたらよいのでしょうか。
まず第一に「誰が運営業者なのか」をチェックすること、具体的には金融商品取引業の登録業者であるか否かを確認しましょう。平成18年の金融商品取引法(金商法)制定により、不動産ファンド業を営むためには、原則として金融商品取引業の登録を、すなわち「投資運用業」かもしくは「投資助言・代理業」の登録を経なければならなくなりました(ファンドの運用を行うためには投資一任業務が認められている投資運用業の登録がより望ましいといえます)。
本来、登録は、許可や免許とは異なり、その拒否を決める審査の手続きはなく、所定の書類を提出すれば行われる建て前になっています。しかし、金融商品取引業者の登録に関しては、実務上、特別な取り扱いがなされています。すなわち、金融庁との事前相談という形で、登録を認めるか否かの〝審査〟が実質的には行われているのです。
具体的には、代表者や運用責任者の経歴、トラックレコード(過去の収益実績や運用成績)、コンプライアンスオフィサー等の重要な使用人の経歴や経験までチェックされます。単にスタッフの頭数を揃えているだけではなく、不動産ファンドを運用できるだけの専門的な能力を備えた人材を集めたか否かがみられるわけです。
これらの点が総合的に判断されて、金融庁に「不動産ファンド業を営むのにはふさわしくない」とみなされれば登録を受け付けてもらえません。
さらに、投資運用業の登録に関しては、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士などの中立的な立場にある専門家によって構成された投資委員会、コンプライアンス委員会が適切な形で設置されているなど、投資家の保護に十分配慮した社内体制が整えられているか否かも厳しくみられます。
「総合不動産投資顧問業」の登録もあれば・・・
このような慎重かつ厳重なフィルターにかけられるため、金融商品取引業の登録を得るのは容易なことではなく、ことに投資運用業に関してはその資格を得るために短くて1年、長くて2年の期間を要することもあります。
ちなみに現在、投資助言・代理業の資格が認められている業者は約1300社、それに対して投資運用業の資格が認められているのは約330社です(不動産ファンドを運営しているのはこのうちの140社程度です)。
しかも、投資運用業の登録とは別に、国土交通省の所管である「総合不動産投資顧問業」の登録も行うことが、制度上、求められています。こちらに関しても事前の厳しい審査が存在します。
逆にいえば、ファンドを運営するAM会社が投資運用業と総合不動産投資顧問業の資格を持っている場合には、金融庁と国土交通省が「このファンドは投資家を保護する仕組みをしっかりと整えている」と“お墨付き”を与えているともいえるかもしれません。
なお、不動産特定共同事業スキームの形で不動産ファンドを営む場合には、金融商品取引業の登録業者である必要はありませんが、前述のようにこのスキームはほとんど利用されていませんし、またその場合には別種の許可が必要となります。