若いドライバーの不足が深刻なトラック運送業界。政府も新たな担い手の活用を模索しているが、なかなか成果を上げられていない現状だ。そこで人手の増員ではなく、「最新のテクノロジー」を使った解決が試みられている。現状と今後について、物流ジャーナリスト・刈屋大輔氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『ルポ トラックドライバー』朝日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
トラックも「自動運転で無人に」?…「賃金は低く、激務」ドライバー不足の打開策 (※写真はイメージです/PIXTA)

ドライバー不足を解決する「テクノロジー」

そうした中、近年は「ドライバー不足の問題」を最新のテクノロジーで解決していこうとする試みが活発になっている。

 

そのうちの一つがトラックの自動運転だ。すでに乗用車分野での実用化が先行する自動運転技術をトラックにも展開していくことで、ドライバー要らずの貨物輸送を実現しようとしている。

 

トラックの自動運転には、街中を走行する集配用車両(小型トラックやバン型車など)と、東京〜大阪間など長距離の幹線輸送を担う大型トラックを対象にした取り組みがある。

 

とりわけ注目度が高いのは後者のほうで、現在、国交省や経済産業省、自動車メーカーやトラック運送会社らが一体となって、実用化に向けた実証実験などを進めている。

 

2017年にスタートした「高速道路上でのトラック隊列走行」実験は、複数台のトラックを高速道路上で一定の車間距離や車線を維持しながら、隊列を組んだ状態で自動走行させるというものだ。2018年1月には、新東名高速道路などで国内初の公道での走行実験が実施された。

 

自動運転・自動走行といってもドライバーをまったく必要としないわけではない。トラックが完全に無人で走行できるようになるのはまだ先の話だ。

 

トラックの隊列走行は今後、①先頭車両ドライバー有人&後続車両ドライバー有人(=全車両有人)、②先頭車両ドライバー有人&後続車両ドライバー無人、③全車両ドライバー無人│というステップを踏んで進展していくことが想定される。

 

自動運転技術を活用したトラックの隊列走行には様々なメリットがある。

 

例えば、先進の安全技術と通信技術を活用したシステムがドライバーの運転をサポートし、ハンドル等の操作ミスを防ぐため、事故が減少する。また、システムが隊列を組んだ各トラックの加減速を制御するため、省エネ走行が可能になる。前を走るトラックの存在で後続トラックの空気抵抗が減り、燃費が改善される。さらに、登り坂などでの減速が原因とされる渋滞の発生も回避できるという。

 

そして何よりも、ドライバー不足問題に与えるインパクトは絶大だ。トラック隊列走行の最終段階である「全車両ドライバー無人化」が実現されれば、文字通り、ドライバーは要らなくなるし、その手前段階の「先頭車両ドライバー有人&後続車両ドライバー無人」であっても、ドライバーの必要数を大幅に減らすことができるからだ。