1月の大幅下落はバリュエーション調整
■1月の米国株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な金融引き締めへの懸念が高まり、大きく調整しました。中でも昨年の上昇相場をけん引したハイテク株は、長期金利の上昇をきっかけとしたバリュエーション調整から大きく下落しました。
■2014年以降、米国ハイテク株は株価が約5倍に上昇しましたが、上昇幅が大きかったこともありバリュエーションへの警戒感が高まっていました。しかし同期間の株価上昇の要因を詳しく見ると、株価収益率(PER)は好調な利益成長から約86%上昇していますが、一株当たり利益(EPS)は約181%増加しており、大幅な株価上昇のかなりの部分が利益成長によるものであることが確認できます。
ファンダメンタルズは良好
■米国ハイテク株のファンダメンタルズは引き続き良好です。新型コロナウイルスのオミクロン型の感染拡大から、世界の経済見通しには依然として不透明感が残りますが、AIやビッグデータを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)のけん引役である米国ハイテク株の業績は好調を持続しています。予想EPSはこの1年間で約3割上昇するなど、その成長性はむしろ加速する傾向にあります。
■民主党政権では反大企業的な規制、特に社会的な影響力が急速に高まった主要プラットフォーマーに対する規制リスクが意識されてきました。しかし、外交面での失点やインフレ率の高まりを背景としたバイデン政権の支持率低迷もあって、こうしたリスクは大きく後退しています。
株価に底入れの兆し、金融政策の動向には引き続き注意を
■1月はほぼ売り一色だった米国ハイテク株ですが、ここへ来て変化の兆しが見られます。業績の良し悪しによる選別がはっきりと株価にあらわれるようになってきており、アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフトなど、直近の四半期決算が市場予想を上回ったハイテク株は、決算発表をきっかけにしっかりと反発しています。
■このように、ファンダメンタルズに対して素直な値動きが見られるようになってきたことから、米国ハイテク株のバリュエーション調整もかなり進んできたと考えて良さそうです。PERをEPS成長率で割ったPEGレシオを見ると、昨年の夏をピークに過去平均に近い水準まで低下してきており、成長性対比での株価評価が割高になっている訳ではないことが分かります。
■このため、足元の米国ハイテク株の株価水準は、その高い成長性やコロナ禍でもびくともしなかった堅牢なビジネスモデルを考えると、魅力的と感じる長期投資家が出てきてもおかしくない水準となってきています。
■ただし、短期的には高水準の市場のボラティリティに注意が必要です。特に、決算発表後に急落したフェイスブックを運営するメタのように、個社要因から業績拡大にブレーキがかかったハイテク株は大きく下げるリスクがあり要注意です。また、今回調整のきっかけとなったFRBの金融政策についても、今後のインフレ動向次第では再び不透明感が増す余地を残しており、引き続き注意が必要です。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『どうなる今後の米国ハイテク株』を参照)。
(2022年2月7日)
関連マーケットレポート
2022年2月1日 逆風下の米国グロース株
2022年1月21日 今後の金融政策と米国株式市場