熱の原因を正しく突き止めるコツとは?
熱の原因として、ウイルスや細菌といった感染症が代表的です。特に新型コロナウイルスの流行下では、熱があればまず新型コロナウイルスを疑って検査を行うことになるでしょう。しかし、実は感染症以外にもがんや膠原病、痛風、甲状腺疾患、薬剤による熱など、その原因は非常に多岐に渡ります。マニアックですが、熱の原因だけで分厚い専門書が書かれているほどです。そのため、正確に熱の原因を突き止めるのは診断に長けた熟練の総合診療医であっても、時として困難を極めます。
総合診療医が熱の原因を正確につきとめるために最も大切にしている手がかり、それは何と言っても患者さんから教えていただく正確な病気の情報になります(この情報を「病歴」といいます)。その病歴の内容を大きな判断材料として、身体診察を行い、採血やレントゲン検査など最適な検査プランを選択してご提案していくことになるので、正確な病歴というは診察する医師にとって一丁目の一番地にあたる非常に重要なものになります。
いま治療している病気や飲んでいる薬の情報、最近の入院や手術の経験といった医療に関する情報はもちろんのこと、最近海外に行ったかどうか、森や川の中に入ったか、最近の性交渉の話といったプライベートな話に至るまで、その全てが熱の原因を突き詰めるための重要な手がかりになります。もし、あなたが熱を出して医療機関に受診した際には、まずはどんなに些細な情報でも構いませんので、医師にできるだけ正確な情報を伝えるようにしてみてください。
解熱剤って飲んだ方がいいの?
最後に、解熱剤のお話をしましょう。熱が出たら、医療機関から解熱剤を処方されることが多いと思います。薬の成分の名前では、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アセトアミノフェンといった種類の薬が代表的です。しかし、こういった解熱剤は必ず飲んだ方がよいのでしょうか。
解熱剤が病気の治療に与える効果については、実ははっきりとした統一の見解はありません。発熱が出る病気の最も重症な状態として「敗血症」という病態があり、これに対する解熱剤の効果を調べた研究がこれまで数多くされてきました。しかし、解熱剤を飲んだために敗血症の生存率が上がったという明確な結果は2022年1月現在出ていません。
ただし、このことは解熱剤を飲むことが無駄だということを意味しているのではありません。もし熱による症状が気になるのであれば、解熱剤を飲んでそれを鎮めることは病気の時間をできるだけ快適に過ごすためにも重要、と言えるはずです。ただ、熱による症状が気にならないのであれば無理に飲まないでもよい、とも言えるでしょう。
ちなみにですが、同じ体温が上がる病態として熱中症というものがあります。猛暑の夏ではよく話題に上がりますよね。これは外気温が高くて体温が非常に高くなり、体温を一定に保つメカニズムが失われ、先述の視床下部の調節とは関係なく体温が上昇しています。その区別のため、「熱」とは呼ばず、「高体温症(hyperthermia)」と呼ばれています。解熱剤は視床下部に働きかける薬が中心ですので、熱中症のときに解熱剤を飲んでも実は効果はありませんので注意してください。
以上、総合診療医の視点で熱についての身近な疑問についてまとめました。みなさん自身や身近な人が発熱したときに思い出していただくと、きっと上手な受診ができるのではないでしょうか。
梶 有貴
国際医療福祉大学成田病院
総合診療科
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