(※写真はイメージです/PIXTA)

いつもお腹が痛いとか、お腹が張って苦しいとか、便が緩いときが多いなどで困っている方はいませんか? なんとなく胃腸の調子が悪い人には、それなりの原因があります。でも病院に行くまでもないし、ちょっと様子を見ようかな…と思っているなら、食生活や生活習慣を見直すことで良くなるかもしれません。めじろ内科クリニック院長・久野伸夫医師が解説します。

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そもそも胃腸が弱くなる原因は?

胃腸が弱いといわれる人の多くは、胃や腸が痛みに対して過敏になっていたり、胃や腸の動きが速くなったり遅くなったりしやすい状態になっています。これらは、主にストレスからくる抑うつや不安などの心理的要因で起こることが多いです。しかし、それ以外にも食事、喫煙、運動不足や不規則な生活リズムなど、食生活や生活習慣が起因していることもあるのです。

「食生活」の見直しポイント

■胃腸の調子を悪くする「食べ物・飲み物」

まずは食事についてです。胃腸の弱い人は、脂肪分の多い食事を摂ると、胃腸の痛みやお腹の張りが強くなることが分かっています。また人によっては、グルテンを含む小麦でも同様の症状が引き起こされることがあります。

 

一方で、お魚やお肉などのタンパク質や主食などの炭水化物では胃腸の調子に影響することはなく、お茶や果物や野菜などは胃腸の調子を良くする傾向がみられています。

 

特に下痢をしやすい人では、脂肪の他にも赤唐辛子などの香辛料、コーヒーなどのカフェイン類、牛乳などの乳製品の摂取でも下痢が誘発されることがあります。

 

お酒に関しては人にもよりますが、酒量が多いと下痢になりやすいようです。胃腸の調子と相談してご自身の適量を確認してください。

 

日常で当たり前に摂取している食事内容を確認し、上記のような胃腸症状を誘発するような食べ物・飲み物がないか知っておくことも、症状の回避に有効です。

 

■暴飲暴食、早食い…「食べ方」も胃腸に影響

また食事内容のみならず、暴飲暴食をせず、生活リズムを整えるためにも3食を規則正しく摂ることも大切です。胃腸の弱い人の傾向としては、早食い、不規則な食事パターン、夜食(それも脂肪を多く含んだ食べ物)の摂取などの食習慣が見られています。注意してみてください。

 

ご参考までに食事について付け加えると、欧米では腹痛、下痢や便秘などの便通異常を主症状とする過敏性腸症候群の患者さんにすすめられている食事療法があります。それは、短鎖炭水化物の食品(英語にしたときの頭文字を並べてFODMAP食品:発酵性食品、オリゴ糖、二糖類、単糖類や糖アルコールを多く含む食品)を摂取しないようにする方法です。

 

具体的には小麦、玉ねぎ、ひよこ豆、リンゴ、トウモロコシ、牛乳、ヨーグルト、はちみつなどを避けて、米、ホウレンソウ、大豆、バナナ、そば、豆乳、カマンベールチーズ、メープルシロップなどの低FODMAP食品を摂るのです。他の具体的な食品については“FODMAP”で調べてみてください。

睡眠、運動、喫煙…「生活習慣」の見直しポイント

次に睡眠です。胃腸の弱い方では、寝付けない、夜間に何度か目覚めてしまう、朝起きても熟睡感が得られていないなどの睡眠障害を抱えている方が多いようです。睡眠も生活リズムを整えるうえで重要です。決まった時間に床に就き、朝も決まった時間に起きるように心がけてください。スマートフォンやコンピューターの画面を寝る直前まで見ていると、メラトニンという睡眠ホルモンが減ってしまい睡眠の質が落ちてしまいます。ご注意ください。

 

運動については、胃腸の弱い方では運動量が少ない傾向が見られています。適度な運動はストレス発散にもなり、胃腸の調子を良くする効果も期待できます。ヨガ、ウォーキング、エアロビクスなどで効果が表れています。

 

喫煙者であれば、禁煙することで胃腸の調子が良くなることがあります。昨今の喫煙事情を考えると、これを機会に禁煙にトライしてみるのも良いかもしれません。

ストレスを自力でコントロールするのは難しいが…

最後にストレスです。消化管の運動に影響する心理的要因の代表は抑うつと不安です。常に気分がすぐれない、不安で心配な気持ちが続くにはそれなりの原因があります。それらは、わかっているけれどどうにもならない問題のことが多いようです。でも解決できるものは解決し、できないものについてはお付き合いしていくしかありません。

 

また、不安なあまり何かにつけて緊張しやすい人がいます。そういった人には自分でできる自己リラックス法があります。自分で暗示をかけることで自律神経を落ち着かせる自律訓練法です。これに関しては精神療法的な面があり、心療内科あるいは精神科を受診して相談するとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか? 実のところ、胃腸の弱いといわれている人の多くは精密検査をしても胃や腸に異常はなく、“みぞおち辺りの痛み”、“胃が張った感じ”や“胃もたれ”などの症状が認められる「機能性ディスペプシア」や、“腹痛”、“下痢”や“便秘”などの便通異常が主症状である「過敏性腸症候群」といった機能性消化管疾患の軽いものと考えられます。

 

これらの多くは経過も長く、内科やあるいは心療内科で内服治療を必要とすることも多いのですが、軽い場合は受診せずに様子を見てしまっている方が多いようです。これまでの内容を参考にしていただいて、食生活や生活習慣を改善すれば少しは良くなるかもしれません。ぜひ試してみてください。しかし長引くようなら、一度はちゃんと病院を受診してみてください。

 

 

久野 伸夫

めじろ内科クリニック 院長

日本消化器病学会専門医

 

※本記事は、日本消化器病学会のガイドラインに基づき執筆しています。

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』から転載したものです。