日本の年金制度は、賦課方式に加え、一部が積み立てられ次年度以降の年金支給に充てられる方式をとっている。そして現在は、これまでに積み立てられてきた保険料を取り崩している段階だ。今後積立金がゼロになれば、政府はどのような手段をとるのだろうか。前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説していく。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。
厚生年金の積立金「31年度には枯渇」…「年金が減るのか」「保険料・消費税が増えるのか」 ※写真はイメージです/PIXTA

10年を待たずに「消費増税」の可能性が高いワケ

この推測は2017年度からの保険料の増加を前提にしているが、17年度はすでに過去であり、本稿執筆時点は21年である。

 

しかも、新型コロナウイルス感染症問題と戦っている最中であり、その収束時期も見通せない状況であり、保険料引き上げは当分棚上げせざるを得ない。

 

このように考えると、10年を待たずに再度、消費増税が実施される可能性が高いのではないだろうか。

 

2014年度の消費増税後、若い人ほど消費性向(消費の可処分所得に対する割合)は低下している。彼らは②から④を予想して節約に努め、貯蓄しているのではないだろうか。

 

以上の検討から、積立金を持たない年金は何回も上記の①から④の約束破りを続けるしかないこと、したがって年金を積立方式に変えるしか最終的解決方法はないということが分かる。

 

このことは、いま(2021年)から22年も前に、八田達夫・小口登良(1999)が明らかにしたことである。

 

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※ 参考文献

鈴木亘(2012)『年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本改革』日本経済新聞出版社

鈴木亘(2014)『社会保障亡国論』講談社現代新書、講談社

八田達夫、小口登良(1999)『年金改革論―積立方式へ移行せよ』日本経済新聞出版

 

 

岩田規久男

前日銀副総裁