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資格取得のために乗り越えるべき「3つのハードル」
不動産鑑定士の資格取得は不動産関連の国家資格の中でもっとも難関といわれます。その理由は、資格取得まで概ね3年以上かかること、そして試験内容の複雑さにあります。
不動産鑑定士試験は、1次試験(短答式試験)と2次試験(論文式試験)の2段階で実施されるうえ、1・2次試験合格後には実務修習(1~2年間)の履修が必須となります。要するに、これら3つのハードルを突破しなければ、不動産鑑定士の資格は取得できないのです。
具体的に見ていきましょう。
①1次試験(短答式試験)
毎年1回(5月)、全国規模で実施されます。学歴や就業歴といった受験資格の縛りはなく、誰でも受験できます。試験期間は1日間で、試験科目は「不動産に関する行政法規」「不動産鑑定評価に関する理論」の2科目です。合格率は約3割で、合格した2年後まで2次試験の受験資格が得られます。
②2次試験(論文式試験)
毎年1回(8月)、東京都・大阪府・福岡県で実施されます。受験資格があるのは1次試験合格者のみです。試験期間は3日間で、「民法」「経済学」「会計学」「不動産鑑定評価に関する理論」の論文問題と、「不動産鑑定評価に関する理論」については演習問題もあります。合格率は約7割です。
③実務修習
2次試験合格者が対象です。履修内容は、基本演習(鑑定評価報告書作成手順の学習)と、実地演習(不動産鑑定評価対象地での鑑定評価報告書作成を通じて評価方法を修得する)課程です。履修期間は毎年12月から翌年11月までの1年間、または2年間の2コースがあり、実務修習終了後に行われる「修了考査」(記述・論文・面接)に合格すれば不動産鑑定士資格が取得できます。
不動産鑑定士の将来…今後台頭するAIとの勝負は?
不動産鑑定士の登録者数は全国で8,000人余りと少なく、不動産会社や金融機関、保険会社などから引っ張りダコです。そのほとんどは将来独立して不動産鑑定事務所を設立し、その年収は1,500万円以上になるといわれます。
しかし、そんな不動産鑑定士を脅かす強敵が存在します。その名は「AI(人工知能)」です。査定はデータ解析がベースとなった業務ですから、「いずれはAIに取って代わられる分野」と予測されています。
ただしそれは、土地価格の公的指標や売買取引事例などの最新情報を漏れなく集積した不動産のビッグデータが構築されればの話であり、日本の不動産業界はまだその域には達していません。加えて、地域の不動産業者が独自に入手した情報や、長年の営業経験から察する相場観といった生の情報をビッグデータに盛り込むことはなかなか難しいといえます。
また、売主が現金化を急いでいるなど、当事者事情で相場価格が不自然に変動することもあり、それらの事象をAIが把握できるのかという疑問もあります。
そして、いまは不動産の価格査定が難しい時期にあります。2021年のオリ・パラ開催直前、多くの不動産業者は「今が価格高騰のピークで、水面下では徐々に下落がはじまっている。表面的には強気の値付けでも、指値をすればすぐに応じる(価格を下げる)」といい、加えて「2021年明け以降は価格下落が具現化する」と明言していました。
その言葉を信じた投資家たちは売却に走り、その結果、ストックが減ってしまったため、オリ・パラ後の不動産市場はインフレ状態に陥り、相場はやや高騰しています。
株式と比べて乱高下の少ない不動産ですが、それでもプロたちの言動によって数ヵ月で価格変動を起こす場合はあります。それらを素早く察知するためにも、不動産鑑定士が持つ「生身の人間力」は、まだまだ重要だといえるでしょう。
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