ジュネーブを本拠とするエドモンド・ドゥ・ロスチャイルド。スイスだけでなく世界中の富裕層に対して個別にカスタマイズした運用サービス等を提供し、その歴史と伝統、運用実績は注目に値する。今回、同社で新興国債券・通貨の運用を担当するシニア・ポートフォリオ・マネージャーのジャン=ジャック・デュラン氏にインタビューを行った。第2回目のテーマは、ブラジル債券投資の「確信度」が高いといえる理由。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のシニア・マネージャー幾田朋彦氏である。

買い手より売り手を見つけるほうが難しいケースも・・・

幾田 運用には逆張りのアプローチをとられているとのことですが、それにしても、キプロス債まで一時保有されているとは驚きました。売りたい時、買い手を見つけるのに苦労しませんでしたか?

 

ジャン 私達は長期保有を基本としています。実際のところ、買い手を見つけるより、売り手を見つけるのに苦労することがあります。そうなると、確信度の高いアイデアに従って思うように投資ができなくなるため、短期的なボラティリティの調整が重要になります。

 

日次のパフォーマンスを見ると、-3%の日もあれば、+5%の日もあります。2015年の月次パフォーマンスを見ると、最悪の月は -8%となった一方で +12%の好成績を収めた月もありました。

 

特に、過去10年においては、流動性が低下し、市場のボラティリティが高まりました。そんな中で、アップサイドのボラティリティを捉える運用を心がけています。競合他社と比べて私たちの運用するポートフォリオの成功率は平均程度ですが、市場が上昇傾向にある時は、他社よりより高い運用成果をあげる傾向にあります。

米ドル建の債務に対する支払い能力が高いブラジル

幾田 もう少し、今投資している国を例に挙げて、確信度の高い投資アイデアについてお話いただけますか?

 

ジャン では、ブラジルについてお話します。2011年にこのファンドの運用を引き継いだのですが、その時ブラジル債券を全て売却しました。その後4年間、ファンドがブラジルに関する債券を全く保有していない状態が続き、社内でも物議をかもしました。

 

ファンダメンタルズの観点からは、ブラジルはすでに景気後退のサインが出ていましたが、指数の組入比率は高く、その結果、スプレッドが非常にタイトになっていました(債券が割高になっているサイン)。

 

昨年まで、ブラジル債を購入するつもりは一切ありませんでしたが、昨年後半から、政治状況が安定し、さらに資金フローなどのテクニカル面での相場環境が好転してきました。その後、国営の石油会社ペトロブラスが対外債務として発行する債券に投資しました。

 

ブラジルの対外債務に対する引当金のレベルを見ても、 米ドル建の債務に対する支払い能力は高いと考えており、現在ブラジルに対してはかなり強い確信度を持ってタイプIIに位置づけしています。

 

幾田 では最後の質問になりますが、シンガポールにも投資されている理由をお聞かせ頂けますか?

 

ジャン シンガポールのポジションはコモディティ関連銘柄への投資を意識しています。2014年後半からコモディティ関連の銘柄に手を出すようになりましたが、ちょうどその頃、ロシアとウクライナの債券が下落していました。

 

商品価格の下落に伴って市場が不安定な中、一部の債券は実際の価値より大きく売られ、価格の割安さで魅力的が高い債券が出てきました。

 

そして、昨年になって、商品関連セクターの組入れを検討する中で投資を決めた銘柄がシンガポールの企業だったことから、ポートフォリオはシンガポールのエクスポージャーをとる運びとなりました。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、エドモンド・ドゥ・ロスチャイルドおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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