支給限度額を超えたら利用者の全額負担
■ケアマネの能力は「ケアプラン」から読み取れる
ケアマネは利用者の心身の状態を観察し、介護者の事情も聞いたうえで、必要なサービスをケアプランに組みこみます。
頼れるケアマネは必要と判断したサービスはしっかり入れますが、それ以外はセーブし、支給限度額の枠に余裕を残したケアプランをつくります。
原則1割負担とはいえ、サービスが多くなれば利用者の負担は重くなりますし、介護保険の財源を無駄づかいしたくないという意識も働く。必要最小限のサービスで効果が出るケアプランをつくる努力をするわけです。
ところが、なかには必要かどうかの検討もたいしてせずに、あれもこれもと過剰にサービスを盛りこみ、支給限度額を超えるケアプランをつくるとんでもないケアマネもいます。支給限度額を超えたサービスは利用者の全額(10割)負担になります。10万円ぐらいは、すぐに超えてしまうのです。
要介護度別の支給限度額も、冷静に見ると、すごい金額です。要介護3で月額27万円超、いちばん重い要介護5にいたっては36万円超です。利用者負担の1割を引いても32万円あまりになります。支給限度額ギリギリまでサービスを入れているケースは少ないでしょうが、これだけの額がかかる可能性はあるということです。
もちろん、けっして安くない介護保険料を払いこんできたのですから、この額分のサービスを受ける権利は十分あるわけですが、ひとりの要介護者に介護保険料から月々最大32万円が支払われるというのは驚きですし、財源も心配になります。
ただし、個々のサービス料を見ると、そう高いわけではありません。たとえば、ホームヘルパーの身体介護。60分未満の場合は3880円です。約1時間で食事や排泄、入浴の介助をしてくれて、この料金なら納得です。
また、要介護3の人が8時間デイサービスを利用したとすると9000円弱です。クルマで送迎してくれて、入浴、食事、レクリエーションのサービスを受けてこの料金は妥当なところでしょう。しかし、これらが1か月積み重なっていくと、20万円ぐらいはすぐに超えてしまうのです。
だからといって、支給限度額は国が決めたわけですし、利用者が財源を心配して、サービスを制限する必要もありません。ただ、心あるケアマネはそうした配慮が頭の片隅にあり、必要最小限で効果があがるケアプランをつくろうと努力するのです。
そのいっぽうで、介護サービスを切りつめ、介護報酬を少なくすることに情熱を燃やすケアマネもいます。サービス事業者の介護報酬をみずから下げているのですから、わけがわかりませんが、そういうケアマネもいるのです。
介護者はケアプランが妥当かどうかをチェックし、ケアマネの能力を見定めることも必要だということです。
相沢 光一
フリーライター