新卒者数が増え続けている中国では、若年層や新卒者の就業が非常に困難な状況になっています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の片山ゆき氏が経済的に恵まれた中で育ったZ世の労働観を解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の中国Z世代の働き方に関するレポートを転載したものです。
中国Z世代の働き方 (写真はイメージです/PIXTA)

Z世代:プライベートな時間や生活をより大切にするも、仕事を通じて技能を高め、レベル向上を目指すなど仕事にも意欲的

では、Z世代は就職活動をし、働いていく上でどのような点に注目しているのであろうか。図表4はZ世代が求職に際して注目する内容を男女別に示したものである。

 

それによると、注目点の上位は男女とも給与・福利厚生(男性:91.3%、女性:93.5%)、次いで仕事量や残業の多さ(男性:59.4%、女性:65.2%)、会社の雰囲気(男性:53.0%、女性:58.8%)となっている。

 

企業理念(男性:22.3%、女性:25.9%)や、企業規模・人気(男性:11.0%、女性:14.4%)などの要素はそれほど注目が高くない点も興味深いと言えよう。また、男女別で見た場合、女性は男性よりも自宅からの距離(男性:36.2%、女性:49.4%)、執務環境(男性:35.5%、女性:42.6%)といった点をより注目している。

 

女性は通勤における負担や職場における環境についてより注目する傾向にあり、より快適に働ける点を重視していると捉えることもできよう。

 

[図表4] [図表5]
[図表4]Z世代が求職に際して注目する内容(男女別)
[図表5]図表5就職時に重視する内容(世代別)

 

一方、就職時に重視する内容を世代別にみた場合はどうであろうか。以下では、X世代(主に1960~1970年代に生まれた人。図表5では65後、75後が該当)、Y世代(ミレニアム世代とも呼ばれ、1980~1990年代に生まれた人。図表5では85後が該当)とZ世代(図表5では95後、00後が該当)に分けて見てみる。

 

図表5によると、Z世代が就職時に重視すると最も多く回答しているのは、収入の高さや福利厚生の充実(図表5-①)であり、およそ6割が重視すると答えている。この項目については、X、Y、Z世代と世代が若くなるにつれて重要度が高くなっている。一方、企業理念への賛同や業務目標の実現については、X、Y、Z世代と世代が若くなるにつれて重要度は低くなっている(図表5-⑤)。

 

X世代、Y世代はZ世代と比較して、就業期間が長く、また、高度経済成長を支えたという経験などもあろうが、世代別で重要度が最も高いX世代の75後は38.9%、重要度が最も低いZ世代の00後は18.6%とその差は20ポイント以上ある。更に、仕事が忙しくなく、趣味や副業の充実を重視する傾向(図表5-⑥)は特にZ世代が高く、例えばX世代の00後はY世代の85後よりもおよそ9ポイント高くなっている。

 

一方、仕事の内容への興味や自身の力の発揮について注目してみると、Z世代(95後:45.0%、00後:49.4%)は、Y世代(85後:47.0%)、X世代(65後:51.7%、75後:52.2%)とそれほど大きな差はない点がうかがえる(図表5-②)。

 

会社における研修の機会や技能の習得、レベル向上といった面においては、X世代の65後(25.9%)などはすでに一定度の職位や技能レベルに達していることも考えられ、それほど高くはない(図表5-③)。Z世代において95後は47.0%、00後は39.3%が重視すると回答しており、特に20代を中心とした95後はY世代(47.3%)と同様に意欲的ともいえよう。

 

昨年は若年層を中心としたライフ・スタイルの1つ「躺平」(タンピン)が話題となった。タンピンの本来の意味は、寝そべるや横たわるである。そこから派生して、競争社会から自主的に離脱し、結婚や出産などのライフイベントを回避し、家や車といった高額消費のみならず普段の生活などの消費も抑える低消費、低意欲の生き方を指している。

 

確かに、経済的に恵まれた時期に育ったZ世代は、それより前のX、Y世代と比較して、仕事よりは自身のプライベートな時間や生活をより大切にし、快適に過ごそうとする様子は見えてくる。高度経済成長期を支えたX世代、Y世代が持つ企業理念への賛同や業務目標の達成といった成長への貢献はそれほど感じられない。

 

しかし、そうだからと言って、タンピンに代表されるような無気力というわけでもなく、自身の力が発揮できる仕事を重視し、仕事を通じて技能を高め、レベル向上を目指すという点はそれ以前の世代とそれほど変わらない点もうかがえる。

Z世代:仕事をする上で直面する大きな課題は、働く上での意味を見出すこと

働くことについて上掲のような考え方をもつZ世代であるが、働く上でどのような課題に直面しているのであろうか。

 

図表6によると、Z世代は仕事の価値や意義などのやりがいが見いだせていない(図表6-①)が全体の5割を超え(95後:54.7%、00後:53.7%)、仕事の忙しさとそれに収入が見合っていないという不公平感を感じている(図表6-②)が4割を超えている(95後:45.2%、00後:42.7%)。

 

[図表6]Z世代が働く上で重視したい考え方
[図表6]Z世代が働く上で重視したい考え方

 

その一方で、自身の能力不足については、それ以外と比較して、それほど感じてない点も見受けられる(図表6-⑨)。Z世代が働く上で直面している課題(95後・00後)についてZ世代の中で比較してみると、20代を中心とした95後は、10代を中心とした00後と比べて、企業内の研修が少なく、自身の能力向上に悩みを抱えているが9.8ポイント高かった(図表6-⑦、95後:28.7%、00後:18.9%)。

 

また、会社が定める規程などへの適合が難しいとする95後は00後よりも8.3ポイント高かった(図表6-⑤、95後:30.9%、00後:22.6%)。その一方で、自身の能力不足を認めるのは00後が95後よりも6.7ポイント高かった(図表6-⑨、95後:7.7%、00後:14.4%)。

 

このように、Z世代は、自身の能力を伸ばすことに意欲的ではあるものの、それに対応する企業内研修が少ない点に悩みを抱えている。10~20代ということもあり、能力や経験不足などによるミスマッチもあると考えられる。

 

しかし、社会がデジタル化で大きく変革し、経済的にもこれまでと比べて大きく恵まれた中で育ったZ世代にとっては、X世代、Y世代とは“働く”ということの意義や価値が異なるのであろう。雇用主側が評価方法や育成の仕方、働き方などについて、彼らのニーズに即したものへとフレキシブルに変えていかなければ、Z世代はそこから簡単に離脱してしまう可能性もある。

 

 

片山 ゆき

ニッセイ基礎研究所

 

 

【関連情報】
資産形成に役に立つ
「幻冬舎ゴールドオンライン」セミナー情報 詳細はこちら>>>