本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した消費文化に関するレポートを転載したものです。
2021年JC・JK流行語大賞を総括する…「第4次韓流ブーム」と「推し活」という2つのキーワード (写真はイメージです/PIXTA)

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2021年JC・JK流行語大賞発表

2021年11月29日株式会社AMFは、2021年下半期に全国の女子中高生内で流行したトレンドから「2021年の流行語大賞」を発表した。若者の間で今年何が流行したのか、そして今後何がトレンドとなっていくのか総括・展望する上で筆者自身も毎年参考にしているランキングである。

 

発表されている部門は「ヒト・モノ・アプリ・コトバ」の4部門で、それぞれランキング形式で5位まで発表されている。本レポートでは筆者の専門である消費文化論の視点から今回のランキングから見えてきた2つのキーワードについて考察する。

 

[図表1]JC・JK流行語大賞2021
[図表1]JC・JK流行語大賞2021

キーワード1「韓国」

図表1は、本年度のJC・JK流行語大賞の各部門のランキングである。どれも中高生内で流行した“今”ホットな言葉である。目にしたことや聞いたことのあるワードは見つかっただろうか。筆者は、このランキングから「韓国」と「推し活」という大きく2つのキーワードを見出した。いずれも今の若者の消費文化を語る上で欠かせないワードである。

 

まずキーワード1「韓国」について論じる。現在、特に若年層の間で「第4次韓流ブーム」が起きている。そもそも「韓流」とは何なんだろうか。1970年代後半の韓国演歌ブームや、1988年のソウルオリンピック、2002年の日韓サッカーワールドカップ開催年など、韓国そのものが注目されたことは過去何度もあったが、当時は「韓流」という言葉は日本では存在・定着していなかった。

 

というのも、韓流という概念は、韓国の文化観光部によって提唱されたと言われており、1997年前後に生まれた韓国ドラマ、映画など韓国の大衆文化が人気を集めるようになった現象を意味していたからである。1999年韓国では、文化産業振興基本法が制定され、文化産業事業の振興や海外輸出のために助成が行われたことでK-POPやドラマなどのコンテンツ産業が活気づくこととなる。

 

日本では地方局、BS・CS放送局、増加や日本のテレビドラマの価格上昇、香港映画の衰退などを背景に、韓国の大衆文化が輸入されるようになり、人気が高まった。そして、日本でもこのブームに対して既に台湾や香港で使われていた「韓流」という言葉が用いられるようになったのである。

 

[図表2]日本における韓流ブームの変遷
[図表2]日本における韓流ブームの変遷

 

日本における「第1次韓流ブーム」は2003年のヨン様フィーバーに日本中が沸いた『冬のソナタ』がきっかけとされている。ペ・ヨンジュン、イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、ウォンビンといった韓流ドラマのブームを牽引した韓流四天王のことを覚えている読者も多いのではないだろうか。続く「第2次韓流ブーム」は東方神起・KARA・少女時代・BIGBANGなどのK-POPグループが台頭した頃である。昨今のBTSを始めとした日本における韓国アイドル市場の土壌が整い始めた時期ともいえる。この2つのブームを経て、元々多国籍な街であった新大久保もコリアンタウンとして観光地化し、2013年には韓国系の店舗数は628軒を超えたという。

 

中でも韓国グルメはその見た目から若者から絶大な支持を得ていた。味はもちろんだが、チーズタッカルビや韓国風かき氷であるパッピンスなどは、その見た目が派手で可愛らしいことからSNS投稿を目的に消費されることも増えた。当時Instagramの国内認知度は2014年12月時点では48.6%であったが、2016年1月には72.8%に増加しており、2017年には「インスタ映え」という言葉が流行語に選ばれるなど、主に若者の間ではSNSに投稿することで消費が完結する消費行動がより一般的となってきていた。

 

そのため、その見た目が派手で可愛らしく映える韓国グルメは、インスタ映えとの相性がよかったのである。また、LCC(格安航空会社)の普及により2016年10月当時、関西国際空港からは1日40便弱、成田空港や福岡空港からは1日20便以上の韓国行きの便があったことが、渡韓の流れに拍車をかけた。K-POPアイドル風のオルチャン(美少女の意味)メイクや低価格で入手できる韓国のプチプラのコスメやファッションを目的に渡韓する若者も増え、また、それらの消費がSNSに投稿されることで、SNSをきっかけに「第3次韓流ブーム」が生み出されたのである。

 

2017年以降になると、いったん韓流ブームは下火となり、新大久保における韓国系の店舗数は384軒まで減少した。2019年度のJC・JK流行語大賞をみても、韓国に関するキーワードが突出して多かったわけでもない。

 

しかし、韓国のプチプラのコスメやファッションなどは若者からの支持を受け続け、お洒落やファッションに興味があるJC・JKにとって新大久保は美容と親和性の高い街として認知されていくこととなる。元々若者の流行は原宿発祥のモノが多かったように思われるが、何か新しいモノを求めて新大久保へと向かうという消費文化が若者の間で定着していったのである。

 

そして2020年以降の我々は、新型コロナウイルスの感染拡大による未曾有の事態の只中にあるわけだが、ステイホーム中のエンターテインメントとして韓国コンテンツの存在感が増していくことになった。このステイホーム期間中の韓国コンテンツの人気が「第4次韓流ブーム」の始まりであった。2020年上半期のJC・JK流行語大賞「モノ部門」をみると音楽プロデューサーJ.Y.パークによる「Nizi Project」や、牛乳の上にふわふわに泡立てたコーヒーがのった韓国で人気のドリンク「ダルゴナコーヒ―」、アジア圏を中心にNetflixのランキング上位を独占した「愛の不時着」がランクインしている。

 

その他にも第92回アカデミー賞で作品賞など複数の賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』やBillboard Hot 100にて2週連続で1位を獲得したBTSの「Dynamite」が世界的に大ヒットした。2020年JC・JK流行語大賞(下半期)と2021年上半期のJC・JK流行語大賞をみると、突出して韓国に関するキーワードが多かったわけではないが、2021年下半期のJC・JK流行語大賞では韓国関連のワードの存在感が増している。

 

[図表3]2021年JC・JK流行語大賞にランクインした韓国に関するキーワード
[図表3]2021年JC・JK流行語大賞にランクインした韓国に関するキーワード

 

図表3は今回のランキング(図表1)で入賞したものの中から、韓国に関するキーワードを抽出したものである。入賞した20個の流行語の内7つが韓国関連のモノであった。ヒト部門の1位の「INI」は2021年上半期のランキングでもヒト部門2位であり、若者の間で益々存在感が増したと言えるだろう。元々韓国のオーディション番組『PRODUCE 101』の日本版『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』からデビューしたということもあり、彼ら自身がスキルアップのために韓国で合宿を行うなど、容姿や歌い方、ダンスは韓流アイドルを意識しているように思われる。

 

モノ部門1位の『Girls Planet 999(通称ガルプラ)』は2021年8月6日から10月22日まで放送されていた韓国の音楽専門チャンネルMnetによる日中韓ガールズグループオーディション番組で、応募総数約1万3000人の中から選出されたプロジェクト・グループであり、日中韓各地域33人、合計99人の中から9人のメンバーが「Kep1er」としてデビューが決まった。

 

モノ部門2位の『イカゲーム』は読者の中にもハマっている人がいるのではないだろうか。筆者の上司も絶賛ハマっているようで世代を問わず流行している韓国のサバイバルドラマシリーズである。若者においてもその人気は例外ではなく、韓国語のだるまさんが転んだに当たる「ムグンファ コッチ ピオッスムニダ」が学校で行われたり、ハロウィン期間にはイカゲームコスチュームが最も検索された仮装のキーワードの一つになるなど、人気コンテンツなのである。

 

モノ部門4位の「渡韓ごっこ」とは新型コロナの流行に伴い海外旅行ができなくなった若者の間で流行している消費行動で、日本にいながらにして韓国へ旅行した気分になれる行動をいう。例えば、

 

(1) 韓国っぽい場所へ行く。(自宅をそれらしく飾り付ける。韓国っぽく見えるホテルへ宿泊する。)

(2) 韓国フードを用意する。(ハングルの記載されたカップラーメンや韓国チキンなど)

(3) お揃いのパジャマを着る。(ホテルで楽しく夜を過ごしている感を演出するためのアイテム12)

 

といった消費行動によって「ごっこ」をよりリアルに演出しようとしているのである。

 

モノ部門5位の「トレカデコ」は好きな韓流アイドルや俳優のトレーディングカードをシールやペンでデコレーションする行為を指す。元々韓国の若者の間で流行していたようで、そのデコレーションした写真を「渡韓ごっこ」としてSNSに投稿する写真に紛れ込ませたり、食事と一緒に写真に写すなどして楽しむようである。

 

アプリ部門4位の「Qoo10」は韓国やアジアを中心とした海外の日用品や化粧品、衣料品や食品を販売している通販サイトである。前述した通り、若者の間で韓流ファッションやコスメが人気であることを背景に、低価格で簡単に韓国商品を購入できるという点が支持されている。特にコロナ禍ということもあり、外出に対して消極的な若者にとっては、通販という非対面チャネルで購入できるという点はメリットがある。一方で外出する機会が少ない中で「いつ購入した服を着用するのか?」という疑問が出るかもしれないが、人によってはTikTokの撮影時に同じ服を着用したくないと考える者もいるようで、投稿で一度着用した服が二度と被らないよう洋服を購入しているようである。

 

SNSがインフルエンサーやユーチューバーとしての芸能界への入り口になり得る現代において、SNS上でのセルフブランディングは彼女たちの大きな関心事でなのである。また、モノ部門4位の「渡韓ごっこ」と併せていえることは、コロナ禍で外出できないからせめて、行った気分になりたい、画面の中だけでも着飾りたいという、コロナ禍の生活様式に合わせた消費文化が若者の間で根付いて(適応して)きているという点である。

 

最後にアプリ部門5位の「UNIVERSE」であるが、韓国のアイドルのMVやLIVE、非公開映像等を日本語字幕付きで視聴できるアプリのことである。以上7つの流行語を簡単に解説したが、2021年下半期において、若者の多くが韓国文化の影響を大きく受けていた、ということがおわかりいただけたのではないだろうか。以前は原宿発のように一か所の拠点を中心に流行が各地へ伝わっていったが、SNSの普及により「SNSで流行っている=流行の発祥」となることが増えたように感じる。また、以前は韓国で流行っていたものが後追いで日本で流行するというケースが多かったが、UNIVERSEやYouTubeなどのSNSのおかげでタイムラグなしで、韓国の若者の日常を知ることができ、現地とほぼ同じタイミングでトレンドが消費されているようにも思われる。

 

特に「ガルプラ」は日中韓3か国を巻き込んで行われていたこともあり、流行の規模が1か国単位ではなくアジアという大きな括りの中で行われた。コロナ禍において人々の生活様式は変化し、行動が制限されたことで、特に若者においては、自身が消費する行動(経験)や実体験よりもSNSにおける他人の投稿(疑似体験)やコンテンツからエンターテインメントへの欲求を充足する消費文化が浸透しつつある。言い換えれば人々は何か面白いモノをSNS上で探究し続けており、そのニーズを充足するかのように、昨今のSNSでバズるコンテンツの多くはボーダレスで、わかりやすく、画一化を意識して製作されている。国籍や年齢層関係なく楽しめるコンテンツがより好まれるようになったことで、SNSの利用頻度が高く、発信力も高い若者層で流行していくトレンドは、今後特定の年齢層や特定の地域だけで消費されていくのではなく、今よりも益々大きく、国際的な規模に拡大して消費が行われていくと筆者は考える。