「大動脈弁の硬化」でゆくゆく起こる怖い事態
「大動脈弁」とは心臓の左心室と大動脈の間にある弁のことを指します。この大動脈弁が何らかの原因で硬くなり、開きが悪くなると、心臓に徐々に負担がかかります。
この状態が長年続き、次第に弁口面積が狭くなることで心臓にかかる負担が増加し、心不全を発症します。大動脈弁の経時的な変化をみてみると、当初こそ弁狭窄を伴わない大動脈弁硬化の状態が、無症状の内に次第に進行し、大動脈弁の肥厚、線維化、石灰化が生じて大動脈弁狭窄症に至ります。加齢と共に狭窄の程度が増悪してくるのです。
様々な研究がなされていますが、原因は明らかになっておらず、加齢のほかに進行に寄与する因子も解明されていません。
狭窄が高度になるにつれ、息切れ、胸の痛み、動悸、足のむくみ、体がだるい・疲れやすい、気を失うなどの症状が出現します。これらの症状が出現した重症大動脈弁狭窄症の患者の平均余命は、狭心痛出現後が45ヵ月、失神後が27ヵ月、心不全後が11ヵ月という報告があり、有症状の重症大動脈弁狭窄症患者の予後はよくないことがわかっています。
また、無症状であっても弁狭窄の程度が特に強い患者や短期間で進行している患者、心機能障害が強い患者などでは突然死や入院を要する心不全に至る可能性が高く、速やかな治療が必要となります。