退職金は余裕資金ではなく老後の大切なお金です。老後資金はいったん減らしてしまうと、取り戻すことが非常に難しいものです。退職金の使い道は慎重に検討する必要があります。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏が『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)「退職金」にどんなワナが待ち受けているか解説します。
恐ろしい…銀行が言う「退職金を運用しませんか?」の怖い仕組み (※写真はイメージです/PIXTA)

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旅行、孫、独立…老後破産を招きかねないワケ

■貴重な退職金が消えていく残念な使い方

 

●お疲れさま旅行のワナ

そのほかにも、退職金の残念な使い方があります。

 

まずは、退職お疲れさま旅行。現役時代はなかなか長期の休みが取れなかったでしょう。長年の疲れを癒やし、気分もリフレッシュできますから、旅行自体はいいことだと思います。

 

でも、退職金を一気に使ってしまうのは禁物です。

 

よくあるのが、世界一周クルージングです。世界を巡る船旅ともなると、最低でも200万円はかかります。ちょっとグレードアップすれば300万円。夫婦で出かければ、400万円~600万円の出費です。

 

退職金が1000万円だとすると、これで半分近いお金を使ってしまいます。

 

楽しい思い出作りにはなるでしょうが、のちのちの生活を視野に入れて長期の計画を立てましょう。

 

●「かわいい孫のために」のワナ

「孫破産」という言葉を聞いたことがありますか。

 

孫の面倒を見ることは、老後の楽しみのひとつでもあります。孫と一緒に遊んで「孫疲れ」になる程度なら問題ありません。ですが、孫かわいさのあまり多額の出費をすると、老後の資金計画が大きく狂ってしまうケースがあるのです。

 

たとえば、孫が快適に暮らせるようにと、子どもが住宅を購入する際、頭金に300万円を援助する。孫たちとの家族旅行は、代金をすべて負担する。一家6人だと1回で約20万円です。

 

このように孫のための出費がかさんでいき、かわりに老後資金はすり減っていきます。それが「老後破綻」への引き金になる恐れもあります。

 

孫がかわいい気持ちはわかりますが、ほどほどにしないと身体も資金も持ちません。

 

●定年後の独立開業・起業のワナ

「蕎麦打ちが趣味だから、蕎麦屋を開きたい」
「ずっと商社マンで頑張ってきた。現役時代に培った海外からの買いつけのノウハウを活かし、輸入代理店を起業したい」

 

そういう意欲を持って、独立開業や起業をする。定年後に夢を実現するのは、とてもいいと思います。生きがいは第二の人生を充実させてくれます。

 

しかし、退職金を全部つぎ込んでしまうのは危険です。借金をしてまでとなったら、なおさらです。

 

成功すれば楽しい日々が送れるでしょうが、必ずうまくいくとは限りません。不測の事態が発生するときもあります。新型コロナの影響で飲食業が大打撃を受けたことは、ご承知のとおりです。

 

もしも失敗したときに退職金がゼロでは、老後生活が立ち行かなくなります。

 

繰り返しになりますが、老後資金はいったん減らしてしまうと、取り戻すことが非常に難しいのです。退職金の使い道は慎重に検討しましょう。

 

長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員
大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、近著に『運用はいっさい無し!60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)などがある。

 

 

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