(写真はイメージです/PIXTA)

ペットを家族同様に育てている方は、自分に何かあった場合、ペットの行く末はどうなるのか不安になると思います。そこで今回は、飼い主の死後ペットの扱いはどうなるのか、「ペットと相続の関係」と「飼い主の死後もペットを守るための4つの対策」をリーガル・フェイスの細井勇樹氏が紹介します。

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民法と刑法における「ペットの地位」

現在の法律においては、ペット等の動物は原則的に「物」として扱われます。民法上はペットに関する明文規定はなく「この法律において「物」とは、有体物をいう。」(民法第85条)との規定により、「物」にあたると解釈されています。

 

また、ペットは飼い主の所有物として扱われるため、民法上の権利義務の帰属主体となることはできずペット自身に財産を承継させることはできません。

 

刑法上もペットの明文規定はなく「物」として扱われ、何か損害を与えた者は器物損壊罪などの罪に問われることがあります。

 

一方で、ペットは命ある存在であるため動物の愛護及び管理に関する法律(いわゆる動物愛護法)では、ペット等をみだりに傷つけるなどした者に対し刑法よりも重い罰則規定が定められています。

ペットに自分の財産を相続させることはできるのか

日本の民法では、遺産の相続や遺贈を受けられるのは「人」のみであり例えば遺言でペットに遺産を相続させると書き残したとしても、法律上認められません。

 

しかし、遺産を直接ペットに譲ることはできなくても「人」を介してならばいくつか方法があります。その対策について次の項目にまとめました。

ペットの生活を守るために知っておきたい4つの方法

対策その1:負担付き遺贈

 

負担付き遺贈とは、特定の人へ財産の譲渡と債務の負担をセットにして遺言を残す方法です。これをペットに応用してペットの飼育を条件にして財産の一部を相続させたり、相続人以外の第三者に贈与することが考えられます。

 

ただしペットの引渡しを受けた者が、遺言どおりに世話をするかどうかは保証されません。そこで遺言執行者を選任して、その監督等をしてもらうことが必要になってきます。

 

そのため、できれば亡くなる前に共同相続人やペットを引き渡す第三者と「引渡し方法」「飼育方法」「ペットの死亡時のこと(いつ、どこで、だれが、どのように)」などを協議しておくことが必要と思われます。

 

またペットの飼育等のためどの程度の財産を譲渡するかもあわせて協議し、共同相続人らの了解を得ておく必要もあります。なぜなら共同相続人らから財産の分配について、遺留分の請求がされることも考慮しておく必要があるためです。

 

以上のような方針が決定したら、公証役場で公正証書遺言(証人2名が必要:相続人や財産をもらう第三者は証人になれません。)を作成します。

 

対策その2:負担付き死因贈与契約

 

負担付死因贈与契約とは、元の飼い主と新しい飼い主との間で結ぶ合意契約です。先程の負担付遺贈との大きな違いは“契約”であるという点です。

 

負担付き遺贈の場合は、相続人(または贈与する第三者)にお断りされた場合負担付き遺贈は成立しなくなってしまうというデメリットがあります。

 

一方、負担付き死因贈与契約の場合は被相続人(ペットの飼い主)と、死後にペットのお世話をしてもらいたい人との間で契約を結びます。これによって、お世話をする人はペットの飼育を原則断れないことになるのです。

 

負担付き遺贈と同様に、当事者間でペットの引渡しの方法、飼育方法、ペットの死後のこと、譲渡する財産の内容などを協議し、公証役場で、公正証書を作成します。

 

対策その3:ペット信託

 

「負担付遺贈」と「負担付死因贈与契約」は、飼い主が亡くなった後に効力が発生しますが、飼い主が病気等でペットの世話ができなくなった場合などはどうすればよいでしょう。

 

それが、民事信託制度を活用した「ペット信託」です。これは、残されたペットの世話等をするための資金や飼育場所など、より細かな内容を信託契約で決めることが可能です。

 

飼い主が亡くなった後のことだけでなく、生前に世話することが困難になった場合にも備えることができます。

 

対策その4:老犬、老猫ホームの利用

 

最近はペットフードや飼育環境がよくなったことや、ペットに対する医療も進歩したことなどによりペットの寿命も延びています。そのため、人と同じように寝たきりになったり、認知症が始まったりなど世話することが困難になるペットが増加しているようです。

 

そこで、人間の老人ホームのペット版といえる「老犬ホーム」や「老猫ホーム」といった家で飼い続けることが困難になったペットの面倒を見る施設が出現しています。短期間のコースから、終身でお世話するコースなどまで種々のタイプがあるようです。

 

施設への入所から毎月のお世話などで、少なくとも100万円前後の費用が必要のようです。

まとめ

ペットは、法律上は「物」であっても、命があり心もある生き物です。そのため、大事な飼い主が亡くなった後の悲しみは人と変わらないものではないでしょうか。

 

今回ご紹介した4つの対策のように、今の日本には飼い主亡き後もペットが安心して暮らしていけるための方法があります。だからこそ大切なペットを守るためにも生前に家族や関係者などとよく話し合っておいたほうがよいでしょう。

 

 

細井 勇樹

司法書士法人リーガル・フェイス

 

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本記事はリーガル・フェイスの士業コラムを転載したものです。

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