大量の所有者不明の土地…政府の「登記義務化」に見る経済効果

ご存じない方が多いのですが、不動産の「相続登記」は義務ではありません。そのため、いにしえの先祖が所有者となったままの土地が多く存在しています。利用価値が低いため、相続人たちが長年にわたり放置しているわけですが、いざ大規模開発などの話が持ち上がると大変です。実際の所有者がわからないのですから…。このような状況を鑑み、国は登記の義務化を進める模様です。これは、経済の観点からも歓迎すべきことです。経済評論家・塚崎公義氏が解説します。

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日本全国で「所有者不明の土地」が急増中

不動産を相続する際、相続人は登記するものと思っている人は多いようですが、現在の法律では、相続登記は義務ではありません。そのため、数代前の先祖が他界したときから放置され続け、令和のいまもご先祖名義のままとなっている土地は、日本全国数多く存在します。

 

不動産を保有すると固定資産税の負担が生じるわけですが、所有者不明なら税務署が困ってしまいます。もっとも、固定資産税がかかるほどの財産価値のある土地なら、相続人が進んで登記をして所有権を主張するでしょうから、問題は軽微だといえます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

深刻な問題は、相続人が所有権を主張するインセンティブを持たない「無価値な土地」に関してです。山間部の無価値な土地であれば、所有者が不明でも通常は困りませんが、もしも高速道路の建設や地産治水工事の実施といった、土地の有効利用を図る場合は大変です。だれから用地を買収すればいいのか見当がつかないからです。

 

高度成長期あたりまでは、相続人も被相続人と同じ村に住み続ける場合が多かったかもしれませんが、それ以降は若者が都会に働きに出てしまうことが多く、それが事態を深刻化させてきたようです。

都会で働く相続人は、田舎の土地に興味がなく…

しばらく前までは「都会に出て行った若者の親たち」も存命していましたが、当然、年月が経てば他界する人は増え、相続件数も増加します。人口移動が活発だった時代より、いまのほうがずっと問題は深刻になっている、ということなのでしょう。

 

そうなると、「所有者の連絡先が把握しにくい」という問題に加え、「所有者である相続人にとって、土地を登記するインセンティブが小さい」ということも問題となります。

 

当該不動産の所有者が近くに住んでいれば、所有者の情報が得やすいでしょうが、都会に出て行った所有者の住所を探すのは大変でしょう。農村在住の親戚との付き合いも減り、しかも都会で何度も引っ越していれば、農村部にはもう連絡先を知っている人はいない、というケースも増えているはずです。

 

そして、都会でサラリーマンになっている相続人は、先祖が保有してきた農地に興味を持たない場合も多いでしょう。そうなれば、登記されず、耕作もされない放棄地となってしまいます。隣の農家が「この土地を借りて大規模農業をやりたい」と思っても、所有者の連絡先がわからない…といったことが起きているかもしれません。

 

相続だけではなく、住所の変更も同様です。所有者が住所変更の登記をしないと、登記簿上の所有者に変更がなくても、住所が変わってしまった所有者と連絡がつかない、ということが起こりかねないからです。

 

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経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載経済評論家・塚崎公義の「身近なテーマで経済センスを磨く」実践講座

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