「一度退院しているので、入院期間は35日間ですね」
実は、半年後に保険金を請求しようと思って、「入院期間は7月27日から1月22日まで」として請求の用紙に記入したのですが保険会社から連絡が来て、「最初の入院は8月31日に退院していますので35日間になります」と言われました。
「白血病の治療は長くかかるので、間に一時退院はあったとしても、トータルで約6ヵ月の入院なのです」と説明したのですが、それは聞き入れてもらえませんでした。
そして、入院と次の入院の期間が一定以上空いていないと、次の入院分については入院費用の補助(1日あたり1万円)が支給されないということでした。
つまり、最初の入院の後に自宅療養を選択しなければ、入院費補助を60日まで受け取ることができたのに、途中で自宅療養を選択したために35日分しか受け取ることができませんでした。
ほぼ1ヵ月分の補助が受けられなくなるのは大問題です。保険会社によっては違う基準になっているかもしれないので、確認が必要です。もっと白血病の治療の現状を理解してもらって、患者の実状にあった保険制度になってほしいなあと思いました。現在は、変わっているかもしれません。ご自分の保険をよく調べてみてください。
しかし、こうした制度的な齟齬があったとはいえ、保険によって私の白血病治療はだいぶ助かりました。40代を過ぎたら、ぜひ「がん保険」と「がん検診」を考えてみてください。
私は、50才になったときにがん検診の一つ「PET検査」を受けました。55才を過ぎたときに再度受けようと思っていたのですが、先延ばしにしていたら白血病になっていました。「がん検診」を受けたからといって必ず見つかるわけではありませんが、「早期発見」が一番の対策である以上、なるべく受けておいたほうが良いと思います。
一定額を超えた医療費が支給される「高額療養費制度」
民間の保険以外にも「高額療養費制度」などがあります。
「高額療養費制度」は、公的医療保険制度の一つで、医療機関や薬局でかかった医療費の自己負担額がひと月単位で一定額(年齢や所得に応じて決められます)を超えた分の金額が支給される制度です。私もこれを利用したのでだいぶ助かりました。
ただし、差額ベッド代や先進医療など保険適用外の医療費などは支給されないので気をつけてください。申請や詳しいことは、ご自分が加入している公的医療保険や厚生労働省のホームページで確認してみてください。
長期入院の間は収入が途絶えてしまうものだが…
また、長期入院になる場合にはその間の収入も問題になります。会社員や私のような私立学校の教員も同じですが、休みの期間が一定の期間を過ぎると「休職」となり、その期間は給料が支給されなかったり、大幅に減額されたりします。
私の場合は、私立学校の専任教諭だったのでだいぶ恵まれていて、傷病による欠勤が1年を過ぎてから「休職」の扱いとなり、標準報酬月額の20%が支給されました。
さらに、私学共済に加入しているため、「傷病手当金」(標準報酬月額の約80%までを補填)が支給されるので一定の生活費は保障されました。有期雇用の方や自営業の方などはそのような仕組みがないので、「就業不能保険」に入っておく必要があると思います。
さらに、子どもが私立学校に通っている場合で、長期入院などの影響で親の収入が極端に減って学費が支払えなくなる場合には、日本育英会や私学振興会などの奨学金があるようなので調べてみるとよいと思います。
ちなみに、私が所属していた学校では教育振興会という組織があって、そこで病気などの長期入院で収入が減った保護者の方への支援を行っていました。そのような場合は、それぞれの学校の教員に相談してみてください。
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向井 健一郎
1958年東京都生まれ。私立学校の理科教員。大学卒業後に都内の私立学校での非常勤講師を経て、1984年から昭島市の啓明学園に勤務。1998年から北海道の立命館慶祥中高に転職し、理科だけでなく情報教育やSSHなどに取り組む。2014年に京都の立命館一貫教育部に配属。翌年の夏に「白血病」を発症し、京大病院での入院治療を開始。2017年4月に立命館中高に復職するも再発。2度の造血幹細胞移植を経て、2019年春に立命館一貫教育部に復職。
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