年金制度には大きな世代間格差が存在する。「親が年金をもらえば、子供は親の老後の面倒を見る必要がないから、子供も年金制度から利益を得ている」という主張も存在するが、果たしてそれは正当だろうか。前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説する。 ※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。
年金受給額の「世代間格差は6000万円」…1965年生まれが損得の“境” ※写真はイメージです/PIXTA

保険料率は、1960年頃の現役世代と比べ「7倍」に

さらに、親が産んだ子供たちが減少したため、社会全体で見て、少ない数の子供たちで多くの老後の親を扶養しなくてはならなくなった。そのため、子供が現役時代に支払う保険料は大きく上昇した。例えば、現在の年金受給者が、1960年度の現役時代に支払った保険料率はわずか3.5%で、70年度でも6.2%にすぎなかった。

 

現在の厚生年金のいわゆる「100年安心プラン」では、保険料率は2017年の18.3%で固定されることになっている。

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しかし、鈴木(2012)は「100年安心プラン」が前提にしている条件を満たすためには、35年度までに、保険料率を24.8%まで引き上げなければならないと試算している。1960年頃の現役世代が支払った保険料率の7倍の保険料率である。

 

このように考えると、「いまの子供は公的年金制度のおかげで、老後の親を扶養しなくてよくなったのだから、年金の世代間格差は存在しない」という主張は、正当性を欠く議論であろう。

 

 

岩田 規久男

前日銀副総裁