節税の代名詞だった「法人保険」…駆け込み加入した経営者が、2022年に直面する「大問題」

節税の代名詞だった「法人保険」…駆け込み加入した経営者が、2022年に直面する「大問題」
(※写真はイメージです/PIXTA)

海外不動産節税の封じ込め、相続税・贈与税一本化への動き…毎年大きく揺れ動く、「富裕層の税金対策」。株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役、一般社団法人相続終活専門協会理事の江幡吉昭氏は、2019年に「NO」を突き付けられた法人保険節税について、2022年に起こる大問題を指摘しています。

「駆け込み生命保険」…マンションオーナー撃沈のワケ

埼玉県にある地主のAさんはマンションを複数棟、自身の法人で所有しています。形式上、1人社長です。当時、出入りの保険の営業さんから強く勧められてプラチナ・生活障害系の全損法人生命保険に加入しました。将来貯まった解約返戻金を何に使うかはとくに決めていませんでした。

 

法人の生命保険料が年間1,000万円。「マンションの大規模修繕費用もあるし年間1,000万円くらいは貯めなきゃな」と考え、定期積立を銀行にしていましたが、急いで解約し、プラチナ・生活障害系の生命保険に加入したのです。

 

ところがよく考えると、保険のピークである2022年から数年の間に、大規模修繕の予定はありません。慌ててAさんが保険を計算してみると、

 

・この保険の解約返戻率のピークが80%であれば、2,400万円(支払い保険料累計3,000万円×解約返戻率80%)ほどの解約返戻金が法人に2022年益金として入ってきてしまいます。

 

・法人税が30%だと仮定すると800万円強の法人税が課税されるので、差し引き1,600万円の現金が残ります。

 

・結局3,000万円も払って半分強しかお金が残らないので、何のために加入したのかということになってしまいました。

 

Aさんには、計画的にぶつけることができる経費はありませんでしたが、大規模修繕に充てたり、退職金に充てたりすることで、課税の繰り延べではなく、節税すること自体は可能です。よって来年以降の解約返戻金のピークに備えて合理的な修繕や設備投資を考える必要があるでしょう。他にも生命保険以外の2019年にはなかった新たな出口戦略にふさわしい節税手法が世の中には存在するのです。

 

どれも1年くらい前から経営計画を立れば対策することができますので、自身の決算期や設備投資などと照らし合わせ、法人保険の2022年問題を乗り切るべきと考えています。

 

 

江幡 吉昭

株式会社アレース・ファミリーオフィス 代表取締役

一般社団法人相続終活専門協会 理事

 

 

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2021年12月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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