気づいたときは手遅れ…銀行の暗証番号すらわからない
ただ、何かきっかけがあれば、すんなりと預貯金の管理を任せてくれることもあります。
私の父がそうでした。要支援のころは通帳・キャッシュカードの保管場所さえ教えてくれなかったのに、突然立てなくなり、要介護3の寝たきり状態になったときは、自分で銀行に行くことはもうできないと悟ったようで、みずからキャッシュカードを私に渡し、暗証番号も教えてくれたのです。
しかし、そういう出来事が起こるとは限りませんし、そのまま時間が経って認知症の症状が出たりしたら、暗証番号もわからなくなる可能性もあります。
そうした状況を避けるためには、早いうちに親と話し合い、お金の使い方のルールを明確にしておきたいところです。通帳・キャッシュカードは親が管理していてもいい。ただ、「毎月、介護費用にこのぐらいの金額がかかるから」と説明し、月1回、親の口座からその金額を引き出すことにする。そして、引き出したら記帳した通帳を親に見せ、確認してもらうことをルールにすれば、お金のことで気を使ったり、あわてることも少なくなります。
なお、親の年金受給額や預貯金が少ない場合は、介護する人が不足分を補てんするしかありません。兄弟がいる場合は、負担を均等にする取り決めをしておきたいところ。お金の問題は血のつながった親子や兄弟・姉妹のあいだでも、こじれると収拾がつかなくなることがあるので、冷静な話し合いができる段階で明確なルールづくりをしておいたほうがいいのです。
また、家計の問題や金銭面の悩みがあったら、ケアマネに相談することも考えたほうがいいでしょう。たいていのケアマネは生活保護受給者をはじめ、経済的に苦しい利用者を担当した経験をもっています。お金の悩みを相談するのは家の恥をさらすようで話しづらいものですが、ケアマネ側は「よくあること」として、ふつうに受けとめるのです。
そして、事情をくんだ対応をしてくれるものです。数多くの事例を見ていますから、受けている介護サービスを削ったり、回数を減らしたりするだけでなく、介護生活をするうえでの節約法もアドバイスしてくれるはずです。とくに評判の良いケアマネは、そうした引き出しが多い。お金の問題も、ケアマネの守備範囲といえるのです。
相沢 光一
フリーライター