デフレにより崩壊した「一億総中流」社会
1990年代以降、低賃金の非正規社員と低年金の高齢者が増加したため、2018年と90年を比較すると、18年の年収350万円未満の所得階級の全体に占める割合が、90年よりも上昇している。年収200万円は生活保護を受ける資格のある水準である。
一方で、350万円以上の割合は減少している。とくに減少が大きいのは、年収500万~750万円層である。これは、日本の中流階層が大きく減少したことを意味している。年収が1000万円を超える層の減少はごくわずかで、ほとんど変化していない。
なお、所得の中央値(所得が全体の真ん中に位置する人の所得)は、2018年は425万円で、1990年の475万円から50万円減少している。
1980年代後半は、日本経済はバブル景気に沸き、「一億総中流」社会といわれた完全雇用型平等社会を実現したが、90年代に入って、バブルが崩壊し、資産デフレとそれに続くデフレが起きると、たちまちこの完全雇用型平等社会も崩壊し始めたのである。
岩田規久男(1995)は、完全雇用型平等社会の崩壊をもたらすデフレに陥らないためには、金融の量的緩和が必要であることを説いたが、日銀を代表するエコノミストは著者の提案に反対し続けた。
また、年収が200万円以下は、いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる人であると思われるが、家計の支え手である35~54歳までの非正規社員の人々(年間賃金は290万円弱)も、子育ての出費などを考慮すると、「ワーキングプア」であろう。
岩田 規久男
前日銀副総裁