大人の英語コミュニケーションには、「言語行為」という考え方と、「表現の調節」が不可欠です。ここでは、Q‐Leap株式会社の代表取締役副社長、愛場吉子氏が2つのポイントについて解説します。 ※本連載は、書籍『話す英語(実戦力徹底トレーニング)』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。
“英語には複雑な丁寧表現はない”は誤り…「ペンを借りたいとき」何と声をかける? (※写真はイメージです/PIXTA)

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日本語とは異なる…英語における「話の構成」の仕方

言語行為(speech act)とは、イギリスの言語哲学者のオースティンらが研究した考え方で、発言が意図する「行為」や「目的」を表します。

 

問い合わせをする、依頼をする、断る、謝る、苦情を言う、といったように、私たちが話をするときには、何らかの達成したい行為あるいは目的があり、その1つ1つが言語行為と呼ばれます。

 

日本語にも英語にも、ほかのどの言語にも、言語行為は存在します。しかし、言語や文化が変われば、同じ言語行為であっても異なる形・ストラテジーで表現されるという点が厄介なのです。

 

ここでは、この形やストラテジーを、「構成要素」(=目的達成のために発話に含めるべき要素、およびそれらの組み立て方)として説明していきます。

 

特定の言語行為における、言語間のこうした構成要素の違いを知らずに、母語と同じような感覚で話そうとすると、相手に意図が伝わらなかったり、時には相手を不快にさせてしまったりする危険性があります。

 

つまり、英語でコミュニケーションをする際には、英語における話の構成の仕方を知り、それらを踏まえた話し方をする必要があるのです。

 

「謝る」という言語行為を例に取ってみましょう。

 

「提出すべき書類の締め切りを過ぎていることを指摘され、日本語で謝る」という状況を想定したとき、多くの人は、特別な事情がない限り、細かな経緯説明などはせず、ただ謝罪するか、あるいは「バタバタしていて」「少し手間取りまして」などと口にするだけではないでしょうか。

 

統計的にも、日本人はアメリカ人に比べて、謝る際に状況や経緯、理由の説明をしない傾向があります。「言い訳がましくなることを避ける」という感覚が働くためでしょう。