数字上では増えているように見える「男性保育士」。しかし、現役園長の山本良一氏によると、就職しても、すぐに転職や退職をしてしまう人が多いのだといいます。本記事では、山本氏の著書『明るい保育は未来を明るくする 「積極的保育」のススメ 』より一部を抜粋し、知られざる保育現場の現状について解説していきます。
なぜ「男性保育士」の離職率は高いのか…現役園長が語る現場のリアル (※画像はイメージです/PIXTA)

保護者からのクレームや同僚の態度に苦しめられる

保護者のなかには、お母さんだけではなくお父さんのなかにも、男性保育士に対して「一緒にプールに入らせてほしくない」「抱っこさせないでほしい」などの苦情を園に言うかたもいます。

 

また、同僚の女性保育士が、クラスのなかでどのように男性保育士と一緒にチームを組んで仕事をしてよいのかわからない状態になったりもするようです。

 

これには、養成校の教育にも問題があるように思いますが、保育士としての教育を充分に受けていないことに問題があるように思います。

 

日常保育のための記録や準備物の用意などの製作能力の低さなどが原因で、同じクラスを担任する保育士との関係がスムーズにいかなくなることもあります。こうなると、感情的対立にまで発展してしまうことが起こってしまい、しだいに居心地が悪くなり、退職にまで至ってしまいかねません。

男性保育士が「居心地悪く」感じてしまう要因

これは、彼らを受け入れる園の保育のありかたにも問題があるように思います。

 

園の保育が、あまりにもクラス単位になっていて、大きい年齢の子どもたちと男性保育士の交流が限定されていたり、彼らの保育に対する位置づけがなされていないことにより、能力を発揮することが困難な状況になります。

 

また、主任保育士やリーダー格の保育士が保育以外のことに追われている現実があって、彼らを日常レベルから教育したり指導したりすることができない園の現実があると、彼らは保育士として力をつけていけない状態に置かれてしまいます。

 

以上のような状況が、彼らの居心地を悪くしていると思われます。

 

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山本 良一

社会福祉法人弘法会理事長、
大東わかば保育園園長

1941年 大阪府生まれ
1960年 大阪府立四条畷高等学校卒業
1967年 関西学院大学社会学部社会福祉・社会学コース卒業
1967年~ 大阪市中央児童相談所児童福祉司
1976年~ 社会福祉法人弘法会理事長、
大東わかば保育園園長を務め、現在に至る。
大阪府社会福祉協議会保育部会北大阪ブロック会副会長、大東市立北条西小学校PTA会長(1984年度大東市PTA協議会会長)、大東市人権擁護委員会委員、大東市児童福祉審議会委員、大東市次世代育成支援対策行動計画作成市民会議委員、花園大学社会福祉学部児童福祉学科非常勤講師を歴任。
著書に『よい保育の場を求めて―大東わかば保育園35年の歩み―』(出版文化社)、『大切なことはみんな保育園で学ぶ』(フォーラム・A)、『子どもたちの輝く未来のために』(現代書林)がある。