ニューヨークで不倫の「日本人夫婦」…慰謝料認められずの理由【弁護士が解説】

ニューヨークで不倫の「日本人夫婦」…慰謝料認められずの理由【弁護士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

日本で不倫をした場合、自分の配偶者のみならず、不貞相手に対しても慰謝料を請求できますが、海外では事情が異なります。本記事では、家事裁判を得意としている水谷江利氏が、日本と海外で異なる「不倫による慰謝料請求」事情について解説していきます。

【関連記事】【ドロ沼離婚劇】女医と看護師の夫、妻に不倫されて離婚後も未練が残る夫の要求とは

不倫相手に「慰謝料」が請求できる国は多くない

日本では不倫は「不貞行為」といい、自分の配偶者に対するのみならず、不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。海外でも、フランスのような国を除いて法律婚を尊重する建前をとっている国では、不貞行為はよくないものとされています。

 

このことから、外国でも不倫の責任を自分の配偶者に対して追及することはできます。しかしながら、その相手に対して追及し、慰謝料を求めることができる国は、日本以外にはなかなかありません。

 

国際離婚の話ではなくなりますが、アメリカでも不貞相手に対する慰謝料請求は(州にもよりますが)認められていません。このことから、東京地方裁判所平成26年9月5日判決(判例時報2259号75頁)では、米ニューヨーク州で主に結婚生活を送っていた日本人カップルについて、配偶者と不貞をした不貞相手に対する慰謝料請求を、認めませんでした。

 

これは、不貞行為については準拠法(よってたつ法律)が不法行為地にあることから、日本の法律は適用されず、ニューヨーク州の法律になること、ニューヨークでは、不貞相手に対する慰謝料請求権が認められていないことによるものです。

「結婚に対する価値感」の違いが顕著に

宗教的な背景もありますが、結婚外の異性と関係をもつことそのものは、各国において良しとされていません。それが刑事罰になりうる国もあれば、民事上の賠償の対象とみなる場合もあります。

 

いずれにしても、その責任を自分の配偶者のみならずその「相手」に請求できると考えるかどうかは、結婚に対する価値観の違いになります。配偶者が外で関係を持ったかどうかは、あくまでカップル同士の問題。相手に責任を負わせるべきではない、というのがグローバルな考え方。

 

日本では不貞相手に対する慰謝料請求事件は後をたちませんので、これはなかなか考えさせられる問題です。

日本での離婚の効力は、本国でも認められるのか

日本で離婚届が成立しても、配偶者の本国での婚姻は継続しているため、相手国での離婚手続きを行う必要があります。手続きは相手国の在日本大使館(領事館)で離婚届受理証明書などの必要書類の届け出を行います。

 

問題は当事者の本国で協議離婚の制度がない場合に、離婚の効力が発生するかどうかです(国によっては協議離婚がない国があるのです)。多くの国では裁判の判決をもって成立すると定めているため、そうした国で離婚を認めてもらうには、日本での離婚の際に裁判を行い、判決文を用意する必要があります。

 

そこで相手国によっても事情が異なるため、事前に大使館や領事館などに問い合わせをし、日本での離婚の効果(特に協議離婚の効果が本国においても有効かどうか)を確認し、有効にするために必要な手続きはどのようなものがあるかを、事前に調べておきましょう。

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録