ところが、もし提案した上司が相性の悪い上司だったら、どうなるでしょう。「生意気なやつだ。気の利いたアピールをして、目立とうとしたつもりかもしれないが、その手には乗らないぞ」などと思われて、かえって心証を悪くしてしまいます。
どんなに素晴らしい提案であったとしても、手柄を部下に持っていかれるのはしゃくです。当然、却下されておしまいでしょう。いや、それで終わればまだいいほうです。
ずる賢い上司であれば、そのプランをちゃっかり借用して、自分の成果としてしまうかもしれません。その場合、部下は利用されただけでなく、大した評価もされず、「泣き寝入り」することになります。
このケースは、どのように対処したらいいのでしょうか。間違いないのは、「相性の悪い上司には、余計な提案はしない」ことです。
その上で、自分なりのプランは別途きちっと練っておき、チャンスが訪れるまで、胸の内にそっとしまっておくのです。
「気持ちの余裕、したたかさ」を併せ持つことが重要
自らアイデアを考えて企画するという行為は、決して無駄にはならないので、是非実行するべきです。実務を通して検証してみるのも悪くないでしょう。更に良いプランが浮かんでくるかもしれません。
自分のアイデアを積極的に提案するのは、相性の良い上司に変わった時です。「それでは時すでに遅し、となってしまうのでは?」と危惧する方もいるかもしれませんが、大丈夫です。
仮にアイデアがそのタイミングで実行されても、成功する保証はどこにもありません。下手をすると、責任の一端を担わされることにもなりかねません。
状況は、刻々と変化します。独自のプランを基本として持ってさえいれば、応用したアイデアが活用できる場面は、その後いくらでも訪れます。
それくらいの「気持ちの余裕」と、「したたかさ」があってもいいのかもしれません。
相性の良い上司であれば、むしろ、提案を望んでいる場合もあるでしょう。上司が直接言葉にしなくても、相性の良い部下に対して、期待していることでもあります。また、その期待は先に述べた「上司から言われたことだけ」の中に含まれる、と解釈することもできます。
従って、相性の良い上司に巡り合えた時が、「チャンス」となるのです。
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中山てつや
1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。